orangestarの雑記

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必要条件と禁足事項とお約束が多すぎてマンネリ化した劇場版ドラえもんはどうしたらいいのか

劇場版ドラえもんに対する個人的な感想で個人的な妄想です。

ドラえもんの劇場版、毎年楽しみにしていますが、劇場版ドラえもんに対して、暗黙なのか仕様として引き継がれているのかわかりませんが、『これをしてはならない』『必ずこうすべき』『このネタは必ず入れておくべき』(そしてお決まりの展開)というのが多すぎて脚本の自由度がかなり下がってしまっている気がします。(時折それを大きく壊す作品が現れて新しい地平を切り開いてくれるわけですが)なんかなあ、もっとドラえもんの映画は自由でいいのになあ、と思いながらそのレギュレーションを列挙して、で、ここら辺はこの映画で壊した、すごいすごい、みたいな話をしていきたいと思います。
例えば、『クレヨンしんちゃん』の映画は、夢、ファンタジー、学園、変な敵、ホラー、なんでもありであり、何でもありであることが『クレヨンしんちゃん』ですが、ドラえもんの場合はそうではない。かなり『枠』があります。他に似たような作品シリーズでいうと『ルパン三世』などが近いです。

映画ドラえもんにおけるレギュレーション

してはならないこと

  • のび太たちが死ぬ(ドラえもんが壊れるはいい)
  • のび太たちが超自然的な力を発揮する(ドラゴンボール的な戦いや、子供たちが大人以上の物理的パワーを発揮したりする)
  • 冒険の舞台は日常を離れて違う場所へ行かないとならない(のび太の町を舞台にしてはならない)
  • 出木杉を連れて言ってはならない
  • のび太たちは成長してはならない(日常に帰らないといけない)

必ずこうすべきこと

  • 物語はのび太たちの自力救済の話でないとならない(デウスエクスマキナを使ってはならない)*1
  • 全ての問題は解決されなければいけない
  • ハッピーエンドでなければならない
  • 現代では現代の文化、科学技術を逸脱するものを出してはならない
  • SFでなくてはならない
  • 観念的な話をしてはならない

このネタは必ず入れておくべき

  • のび太の射的
  • ドラえもんの「僕はたぬきじゃない!」
  • かっこいいジャイアン
  • しずかちゃんのサービスカット

(おきまりの展開)

  • のび太が~~したい、~~へ行きたい、~~を証明したい、と提案。それにドラえもんが行けるように調整する
  • それにスネ夫、ジャイアン、しずかちゃんが便乗
  • 楽しく遠足のような冒険を行うが、ある点を分水流に日常に戻れなくなる
  • 問題が発生。状況を解決せざるを得なくなる(この場合、明確な敵が示される場合とそうでない場合がある)
  • 5人とゲストキャラクターが力を合わせて問題を解決
  • 物語の終わり


などなど。他にもあるとおもうけれどもちょっと思いつくのはこのあたりかも。
で、時々それを壊す作品が現れて、『これでも行けるんだ!』とか『やっぱりこれは失敗だった』とかなって新しいレギュレーションが作られていく。(ただ、F先生の描いた大長編ドラえもんという聖典があるのでそこまで逸脱することはなく、基本的にはそこへ戻っていく)
例えば、『ひみつ道具博物館』がターニングポイントとなった作品で、『敵』という存在がでてこず、また、場所となっているのがひみつ道具博物館という小さい閉じた場所で、行われることは『犯人捜し』というミステリー、今までのドラえもんからは大きく異なっていて、それでいて面白い!大長編ドラえもんの中では物凄く異質な作品であり、年々評価の上がる作品です。
他には、『新恐竜』も意欲的な作品で、こちらも、『楽しく遠足のような冒険を行うが、ある点を分水流に日常に戻れなくなる』というシーンがなく、のび太たちが終始能動的に行動していて、目的達成に対して一直線の物語なので、すごくわかりやすい。『宝島』の時もそうだったけれども、川村元気さんのかく脚本は本当に構造が綺麗。

レギュレーション壊しはしてもいいのか、またレギュレーション内でできることはないのか

多分色々な問題があるのだと思います。毎回お約束があるように、お客さんは『劇場版ドラえもん』を見に来ている。行きつけの蕎麦屋みたいなもので、急にラーメンを出されても戸惑ってしまう。あくまでも、先代からつけ継いだそばを出し続けないといけない。先代が生きているなら、先代自身が味付けを変えてみた、みたいなのもありかもだけど、もう、代は2代目3代目となり、引き継いだ味を守るのに結構いっぱいいっぱいになってる。
色々とレギュレーションぎりぎりでやって見れることって多分あって、ひみつ道具博物館が、ミステリーをやったように、ホラーや、ラブロマンスや、パニックホラーをすることもできるかもしれない。

色々と考えられることもあるけれども、自分は一消費者であるので、今後も面白い大長編ドラえもんを期待しながら眠ることにします。

*1:これは新ドラからのレギュレーションです