orangestarの雑記

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メキシコの漁師地獄または赤の女王のジレンマまたはコンサルタントの素晴らしい仕事

メキシコの田舎町。海岸に小さなボートが停泊していた。
メキシコ人の2人の*1漁師が小さな網に魚をとってきた。
その魚はなんとも生きがいい。それを見たアメリカ人旅行者は、

「すばらしい魚だね。どれくらいの時間、漁をしていたの」 と尋ねた。

すると漁師は

「そんなに長い時間じゃないよ」
と答えた。旅行者が

「もっと漁をしていたら、もっと魚が獲れたんだろうね。おしいなあ」
<<中略*2>>

「そうしたら引退して、海岸近くの小さな村に住んで、
日が高くなるまでゆっくり寝て、 日中は釣りをしたり、
子どもと遊んだり、奥さんとシエスタして過ごして、
夜になったら友達と一杯やって、ギターを弾いて、
歌をうたって過ごすんだ。 どうだい。すばらしいだろう」

そして漁師Aはアメリカ人旅行者のいう通り、
(中略)してもっともっと魚をとって
(中略)して大漁船団を作った。


そうすると近海の魚を毎年成熟産卵前の幼魚まで取りつくしてしまう。
そしてどんどん漁獲高が減っていった。
売上の高い良い魚は取れなくなったので漁法を替えて、
普段は雑魚としてとらないような魚も取るようにしたけれども、
その魚もとれなくなっていった。


仕方ないので小さい生まれたばかりの稚魚もとるようになった。
稚魚は商品価値が低いので、今まで以上に長時間漁に出なければならず、
いつの間にかそれも取れなくなった。
近海の海は魚の取れない海になってしまった。


やがて、ガソリン代にも困るようになった漁船団には借金だけが残った。
今まで漁師しかしてこなかったので、他の仕事がわからない。


奥さんは家族を養う為にパートに出た。
少ないパートの稼ぎで一家は暮らしている。
男は陽が高くなるまでゆっくり寝て、日中は釣れない釣りをしたり、
子どもと遊んだり、奥さんが働いている間シエスタをして過ごして、
夜になったら、友達と一杯やって、ギターを弾いて、
歌を歌って過ごした。





漁師Bはアメリカ人旅行者のいうことを聞かず、
今まで通り漁をして暮らしていたが、
漁師Aが海を魚の取れない海にしてしまったので、
どうしようもなく貧しくなって死んだ。



うなぎグルメギフト 国産鰻(うなぎ)蒲焼 3枚

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コンサルティングの悪魔―日本企業を食い荒らす騙しの手口

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*1:付け加え

*2:と言うと、漁師は、自分と自分の家族が食べるにはこれで十分だと言った。「それじゃあ、あまった時間でいったい何をするの」と旅行者が聞くと、漁師は、「日が高くなるまでゆっくり寝て、それから漁に出る。戻ってきたら子どもと遊んで、女房とシエスタして。 夜になったら友達と一杯やって、ギターを弾いて、歌をうたって…ああ、これでもう一日終わりだね」すると旅行者はまじめな顔で漁師に向かってこう言った。「ハーバード・ビジネス・スクールでMBAを取得した人間として、きみにアドバイスしよう。いいかい、きみは毎日、もっと長い時間、漁をするべきだ。それであまった魚は売る。お金が貯まったら大きな漁船を買う。そうすると漁獲高は上がり、儲けも増える。その儲けで漁船を2隻、3隻と増やしていくんだ。やがて大漁船団ができるまでね。そうしたら仲介人に魚を売るのはやめだ。自前の水産品加工工場を建てて、そこに魚を入れる。その頃にはきみはこのちっぽけな村を出てメキソコシティに引っ越し、ロサンゼルス、ニューヨークへと進出していくだろう。きみはマンハッタンのオフィスビルから企業の指揮をとるんだ」漁師は尋ねた。「そうなるまでにどれくらいかかるのかね」「二〇年、いやおそらく二五年でそこまでいくね」「それからどうなるの」「それから? そのときは本当にすごいことになるよ」と旅行者はにんまりと笑い、「今度は株を売却して、きみは億万長者になるのさ」「それで?」