orangestarの雑記

小島アジコの漫画や日記や仕事情報など

ドキュメンタリー「幻の動物王国」が「コワすぎ」みたいで怖かった。

amazonプライムに入っている「幻の動物王国」という映画をみました。ドキュメンタリー映画です。

amzn.to

どういう映画化というと

1990年。千葉の奥地で数百匹の捨て犬を養う男が日本中で話題となった。テレビ・雑誌から「愛犬家の神」と崇められ、狂気と紙一重のカリスマで多額の寄付を集めたその男・本多忠祇さんと、彼の王国である「しおさいの里」。配下のボランティアに大雑把な飼育を暴露され、日本中のマスコミから手のひら返しの大バッシングを受けた本多さん。支持者はひとり残らず去り、国民から忘れ去られ数十年の月日が経った今もなお、不法投棄された廃棄物のなか、たったひとりで沢山の犬を養い続けるその真意とは。(公式の説明)

という映画で、千葉の田舎にたくさんの犬と一緒に廃材で埋め尽くされた空き地に住んで生活している男の人をただ映した映画です。お話の終わりは、いつの間にかこの本田さんが亡くなっていて、犬もいなくなっていた、というものです。このドキュメンタリーを観ている最中になぜか、「コワすぎ」や「放送禁止」シリーズを思い出してしまって、どうしようもない不安な気持ちになってしまった。
最初は、この初老の人が、そのようなシリーズに出てきそうな感じなのかな、って思ったのだけれども、そうではないことが見ているうちに分かってきました。
ドキュメンタリーというものは基本的に恐ろしいもので「放送禁止」や「コワすぎ」シリーズはその恐ろしいところを戯化して見せているだけに過ぎないんだ、ということに。


本多さんは100頭以上の犬と暮らしているけれども、別に犬好きではないと本人は言っている。本多さんが犬と暮らしている「しおさいの里」はかつてテレビでも取り上げられたことがあり、そのせいで、飼えなくなった犬や病気になった犬をその近所に捨てに来る人が絶えない。土佐犬やらでかい犬、凶暴な犬、犬種を問わず捨てられていく。本多さんに噛まれたりしないんですか?と聞くと普通に何千回も噛まれたと答えて、逃げる犬を追いかけてって一緒に散歩してたらふく食わしてやればどんな犬でも言うこと聞くようになっちゃう、らしい。皮膚病になって捨てられた皮膚がビロビロになった犬を、「こんなのクレゾールの原液で洗っちゃえばすぐに治っちゃうんだから」と言っていたのが印象深い。家を放火で焼け出されてしまったと言っていて、今は犬と一緒に廃車になったワゴン車の中に布団を敷いて、その中で寝起きをしている。そして朝の4時に起きて犬の散歩をしに行く。


世間一般で観られているドキュメンタリーというものは、“ひとそのもの”を写すものではない。まず物語があり、その人を含む事象に対してのテーマがあり、それに沿った絵を集めて、それに沿った話に編集をする。ドキュメンタリーを撮ろうと思った時に、そして誰を題材にするかというものが決まったときに、もうすでにストーリーというものは出来ている。途中でその想定が現実と違ったとしても、(誠実な作家なら)“その違った現実の姿”という形でやはり新しい物語を作る。そこには作為があり、なにがどうなってどういう結末を得たという起承転結がある。その人がどうしてそうなったのか、そしてどうなるのかには因果がある。


だけれども、現実に生きている人間にはそんな分かりやすい物語はない。人生は複雑であり、様々な原因があって今の姿になり、そして行動も一貫性があるわけではない。人がどこからきて、何物で、どこに行くのかということに関連性もなく、そして、分かりやすい理由もない。人生は怖くて複雑だ。


この「幻の動物王国」は、そのような“物語”を見出せるような編集が行われていない。それが意図的なものなのか結果的にそうなってしまったのかは分からないが。本多さんと出会って、そして話を聞いて、話を聞いて、話を聞いて、次に会いに行ったら本多さんが亡くなっていた。ただそれだけの映画だ。本多さんの話に取り止めはなく、どこまでが本当の起こったことなのか、本当に考えていることなのか分からない。そして、話をする人の常として、何度も同じ話をする。それは細部が変わっていたり、同じようだったり。ネットを調べれば本多さんの過去の話などがある程度見つかるのだけれども、映画の中ではそういう資料を一切示さずに、ただ、本多さんのインタビューとカメラマンの会話だけで終始する。広い空き地の中の、生活の道具や、犬とどのように生活しているのか、だれがここにやってくるのか、そういう話の合間に、本多さんの話が挟まれる。だけれども、それがどこにもつながらない。物語がどこにもない。そこには本多忠祇さんという一人の人間がいるだけだ。それがとても恐ろしい。


人の人生を覗き見るのだ。それはとても恐ろしい。だから“ドキュメンタリーの中に構築される物語”というものは、人の人生をある地点からある地点までで切り取る。人生はずっと続くのに、そして、知りえぬ彼方から始まっているのに、それがないことのように扱う。人生を1クールのドラマみたいに切り取って、めでたしめでたし。その後はもうない。だから怖くない。


だけれどもこの映画には、それがない。始まりも果ても想像できない人生が写されている。それがとても怖い。



「コワすぎ」や「放送禁止」シリーズというものは、そういう“表面的に語られる他人の人生の切り取られた物語”に対して、“ほんとうに、そう?”という疑問を投げかける、そういう作りになっているから、恐ろしい雰囲気がするのだろうな、と思った。妖怪や、その裏の人間の悪意というものは、それらのモキュメンタリー作品の恐ろしい部分の、たぶん半分くらいにしか過ぎないのだと思った。

現在、amazonプライムは月々契約で400円で加入できるようになっています。

色々便利ですし、お試し的に加入してみてもいいんじゃないでしょうか。
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映画「青鬼」を見た。聞いていたのよりも悪くなかったよ

映画青鬼を見た。amazonプライムにて。ちなみに原作は未プレイ。

ゲーム原作の映画化。
ゲームは、「青鬼という異形の化け物が徘徊する館に閉じ込められたに閉じ込められた人間が、館の謎を解きながら脱出を試みる」というもので、それを映画のシナリオに落とし込んだようなお話。

amzn.to

この映画のアマゾンレビューをみると、評価が「微妙」とか「最低」とか散々なんだけれども、自分がみたらそこまでひどく無かった。むしろ、しっかり作りこんでいるな、と感心しました。


僕はホラー映画とかパニック映画とか好きで、結構よく見るんですよ。ホラー映画、パニック映画の中にはもっともっとひどい映画がたくさんあるなかで、これはかなりしっかりと作られている方です。。モンスターがちゃんと動くし、CGが地面を歩いているし、編集もちゃんとしていて謎の間がないし、物語全体の謎解きも一応論理が通るように設定されている。


他のホラー映画の平均から比べたら、ちゃんとしてるし面白いし、一体何が不満なのかわからない。みんなクソみたいなホラー映画を見たことがないんだな?かわいそうに…。一週間後もう一度ここに来てください。本当の微妙映画をお見せしますよ、と俺の中の山岡が言っている。とりあえずオススメすると、ダメ映画界ではサメ映画にはずれなしなので、ひどい映画が見たかったら、何とかシャークって書いている映画を見るといいです。トルネードシャークはちゃんと見れる映画になっているので、初心者にもおすすめ。あと、オブザデッド系も、10本中9本は、アチャーな映画なので、おすすめ。初心者にもおすすめできるのはゾンビランドですね。ゾンビ映画の身内向けのダメなところが詰まっています。オススメ。ところで今ググったところ、シャークオブザデッドっていう映画ってまだないんですね。もうだれか作ってると思ったのに…。


話がそれましたけれども、この青鬼、とてもよくできています。あと、予算がない中でちゃんと映画にしよう、見れるものにしよう、という工夫があちこちに感じられる。画面の中で静と動をつけるための手持ちカメラでの移動など、(効果的かどうかは別として)ホラーで試される様々なカメラワークで画面が飽きないように作られていて、ホラー的な演出バリエーションの勉強になる。青鬼はかなりちゃんと作られているCGで、動くしちゃんと地面を歩く。先ほどの追いかけてくるカメラワークは、たぶん“青鬼が固定画面を動く”シーンを極力減らしたいけれども襲い来るシーンを書きたいということでの苦肉の策だと思う。CGが固定画面を動いていると手間がかかるけれども、画面自身が動いているとごまかしがきく部分が多いから。
そういう、「予算内で最高の映画」が作られてる。すごいうまいなあと思うし、ある程度ちゃんと怖いものに仕上がってると思う。「襲われて戻ったらばらばらになった死体がポンってどうなの」っていうレビューもあったけれども、これPC-12指定だから、そこらへんが限界なんだろうなあ…とも思うし。ぼんくら映画好きでない普通の映画ファンにそういう忖度を求めるのは無茶だと思うけれども。


あと、青鬼の初登場シーンがとてもよかった。


すでに何人かが死んでいて、でもなんで死んでいるのか分からない。別々の行動をしていてたら、突然、いたはずの部屋や場所で肉塊になってる。そういうのがあった後、暗闇の中で扉が開く。諸星大二郎の漫画に出てくるみたいな肉の塊の何かがノブをつかんで開いている。肉の塊の一部だけ見えて、カメラが素通りするので(本当にあった怖い話の“お分かりいただけただろうか”のような感じ)不安と不気味感だけが募る。あの一瞬がとてもよかった。


あと、青鬼が、死んじゃったこの声真似をするところとかですね。シナリオの展開の都合で最初から死んじゃってる人間だってことがわかってるんですけれども、そういう“怪物が声真似をして呼んでくる”っていうシチュエーションが好きです。知能があるけれども、知性がないという存在ってとても怖くないですか。


とにかく言われているほどひどいものではなかった。あのエンドには少し納得いかないというのもわかるけれども、たぶん全滅エンドにできない外部的な理由があったんだろう…アイドル映画だしな…。



同じように、「もともとのファンからは叩かれているけれども、映画としてはとても良い出来」という映画に、「リアル鬼ごっこ」があります。これも、原作をうまく改変して、平衡世界物としてうまく物語を作成していてとても面白いです。もし、ちょっとした人生の分岐点の選択肢を別で選んでいたらこうはならなかったのかもしれない、っていうやり直しとか、そういうSF的な物語になっていて、食卓SF好きとしては本当にうれしい。あと、シュールなジョークもよくて。作中で、異世界に飛ばされたときに「王様ってなんだよ?」とその世界の常識を知らない主人公に「王様って日本の王様だよ!」っていって遠くに見えるものすごい高いタワーを指さすシーンがシュールですごい好きですね。会話不可能性のジョーク。藤子F作品でよくあるやつです。そういうSF的ネタと状況説明をいっぺんにしてしまう。かなり脚本が練られている。とてもよいので一回見てみてください。


リアル鬼ごっこ

リアル鬼ごっこ




関連:最近、食卓にSFがのぼることがなくなってきた(ぼくらの勇気~未満都市SP) - orangestarの雑記

共謀罪可決について思うこと

昨日、明け方に「組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律等の一部を改正する法律案」通称、テロ等準備罪、または共謀罪が成立しました。これについては書かない方がよい、触れるべきではないのかもしれないのですが、スルーするのもなんとなく違うな、と思ったので、いろいろと思うところを書きます。


すべての人の発言が、その立ち位置から見える景色によるように、自分も自分の見える景色からしか見ることはできないし、判断できません。自分の“漫画家”としてのポジションとして、この法案には反対ですし、成立してしまったので、あーやだなー、という気持ちです。


法案が成立したからと言って、何かが急に変わるわけでもないし、また、法律が法律ですので、実際にこの法律で逮捕される人間も当分は出ないでしょう。1995年にオウム真理教の事件があったとき、破壊活動防止法という“成立したときには治安維持法の再来”と言われたような法律の適用対象になるかどうかの議論があったのですが、事件後に大勢逮捕者が出た後ですでに脅威と言えないということで、適用されませんでした。
今回の、共謀罪も、同じように“使うとヤバい”法律であるので、実際に適用されることは、よほどの事情や状態にならないと適用されないでしょう。例えばどこかの国と全面的な戦争になって負けが込んでくるとか、国家総動員的な戦争状態になるとか。現実的ではないですね。


で、なんで反対かっていうと、実際に適用されるかどうかは別として、この法案が、人の自由な考え方や自由な行動を縛る可能性がある法律だからです。(運用される恐れはないからというのと、実際どうかなったときにどうかなる可能性があるというのはまた別の話です)
内面の自由というものは、人が頭の中でだけなら何を考えてもいい、というだけの自由ではありません。内面の自由というのは、表現の自由を伴って初めて内面の自由足りえるものです。思想・良心の自由、学問の自由、信教の自由などが内面の自由にあたりますが、それら“内面の自由”は、それを表に出す、または勉強という行為をする、本を読む、人と話をする、教会へ通う、集会をする、そのような行為を伴うものです。(表現の自由というのも、本を出版する、twitterに書き込むというものだけではなく、このような“内面の自由”を外側に表す行為を含めての表現の自由です)
この、テロ等準備罪は、そういう個人の内面の表出を行うことに抵抗感を抱かせるものです。この「言葉を言ったら、要注意としてマークされるかもしれない」「この本を出版したら出版社全体がマークされるかもしれない」「この集まりに参加したら」云々。そうやって自主規制を重ねることによって、規制はどんどん強くなっていくしよくわかんないルールが蔓延することになります。これは歴史が証明している。


そういう状態になったら、いろいろ漫画とか描きにくくなるな…というので、自分はこの法案には反対です。


あと、もう一つ。「この法案は、普通の人には関係ない」ということなんですが、確かに、普通の人には関係ない法律だと思います。治安維持法でさえ逮捕者は70000人程度、当時の人口が5000万人程度ですので、人口のほんの1.4%です。98%の人間には関係ない法律です。つまり、万が一のことがあって、たとえ日本がもう一度泥沼の戦争に突入したとしても、98%の人は、この法律を恐れる心配はないっていうことです。安心ですね。


だから、まあ、普通の人は安心していいんですけれども、自分は漫画家という仕事をしているし、躁うつ病持ちだし、いろいろと普通ではないので、かなり心配です。やだなーって思う。1.4%っていえば、学校のクラス3クラスあったらそのうちの一人、ということなので、中学校の時、学年で1番か2番に変な奴認定されていた自分としては安心はできません。
あと、恣意的な運用ができる法律というのは自分の性格的に好きくないです。適用範囲に曖昧な部分が多すぎる。法律っていうのはルールで、法律が恣意的な運用ができるというのは、ルールを好き勝手に決めれるということで、例えばカードゲームでプレイ中にそういう風にルールを勝手に変えられたら困りますよね。自分は性格的に、“ルール”は“ルール”であるべきだと思っているので、そこらへんが嫌ですね。


加計学園に関して思うこと

法律的には多分問題が一つもないと思います。
問題は、個人的な理由によって公権力が運用されたこと。
建前と本音っていう部分があって、それが国の一番偉いとされているひとは、建前の部分を守らないといけないと思う。そういう当たり前のことだと思います。小学生だってそう思う。
教育勅語を推しているのならなおさらです。
教育勅語っていうのは、忠君、組織の上下関係を倫理によって規定するもので、下は上を敬わないといけない。そしてそれには、“上は下の模範にならないとならない”というのとセットです。だから、教育勅語のようなものがベースにあるような社会では、倫理というものが法律よりも優先されます。(だから自分は教育勅語などが嫌いなんですが)それが、個人的な人間関係の利益を優先させたり、質問に答えずごまかしたり時間稼ぎをしたり失敗を認めなかったりというのはとてもよくないと思うんですね。教育勅語的世界観的に。そんなことをしたら小学生の子どもに示しがつかない。“宿題は確かにやったが破棄した”“調査する必要はない”“問題には当たらないと家族会議で決定した”とかいっても、それを先生は怒れなくなっちゃう。(教育勅語的世界観で)先生より偉い人が、それをやっているのだから。


そこらへんで、なんというかみっともないなあ、とは思う。

じゃあ、安倍内閣以外の選択肢があるのかっていうと

まあ、よく言われるこれなんだけれども、正直難しいのかなあ、って思う。
国民が問題にしているのは経済政策なんだから、野党は“アベノミクスと同じことをやる、経済政策はそのまま”っていう風にすれば行けるんじゃないの?っていうのをどこかで見た気がするけれども、無理じゃないかなあ…って思う。
これは、加計学園問題ともつながるんだけれどもそこで(そして、NHKやそのほか色々にたいして)行われている“越権的な賞罰”っていうものが問題で、そしてそれがアベノミクスを何とかうまく駆動させられてる原因だと思ってる。
(通常は行わないような)越権的な賞罰を行うことによって、その越権的な賞罰にかかわった人間が、自分の越権的な賞罰の対象になることを期待、または恐れることによって、越権的な賞罰の届く範囲というものは雪だるま式にどんどん広がっていく。(その広がっていった結果が、加計学園であり森友学園になる)。その越権的な賞罰というのは、中央または一人に権力が集中するという効果がある。、
行政や議会の意思決定というものは“手間と時間がかかる”ように制度設計されていて(安全弁のために)うまく運営されている場合はそれでいいのだけれども、即断しなければならない場合、抜本的に物事に対処しないといけない場合に、それは足かせになる。権力一極集中はいいところと悪いところがあって、それが両方表に出ている感じ。



とにかく一番悪いのは何かっていうと

景気が悪くて経済が回ってないのが悪い。景気が良くなったら、そういうの全部吹っ飛ぶので何とかなってくんないかなーって思う。5000兆円くれ。

「隻眼の少女」がムチャクチャ(で)面白い!

たまたま図書館でとった本、「隻眼の少女」が読みだしてみるとムチャクチャ面白くって、一体この作者は誰なんだろう他に何を書いている人なんだろうって思って調べたら、自分の近くの界隈で評判になっている「貴族探偵」の作者で、久しぶりに「ごん…お前だったのか…」みたいな気持ちになった。
ちなみに他のごんおま案件としては大樹蓮司先生の正体が前島賢先生だったこととかです。「探偵と勇者のゲーム」と「ぼくらのオルタナティブ」と「ほうかごのロケッティア」は名作なのでみんな読んでください。




話がそれたんですけれども、本当に「隻眼の少女」面白かったんですよ。面白かった部分がほとんどネタバレになるから、あんまり言えないんですけれども。探偵役のヒロインが水干姿(昔の巫女さんみたいなよく分からない恰好)で母親から名前と探偵技術を受け継いだ片目に翡翠の義眼を入れた17歳の少女、っていう、属性てんこ盛りのヒロイン。さらに格闘技術は超一流で、ツンデレ。完全に過積載。
そんなヒロインと、「自分の父親が保険金のため母親を殺し、それで平然としているような人間だと知り絶望して、さらにそんな父親を殺してしまった自分自身にさらに絶望して、人生と世界と自分自身に嫌気がさして自殺を考えている青年」が主人公っていう。
まあ、流れ的になぜかその二人が偶然訪れた村で凄惨ななぞらえ殺人が起こり、探偵と探偵助手という関係で事件解決に動いていく中で、二人の間に恋心とかなんか甘酸っぱいものが産まれたり産まれなかったりする話なんですけれども、まあ、こう、あらすじだけ書くと、本当に普通のそこら辺によくあるラノベ調の推理小説なんですけれども。



なにかがおかしい。



いや、最後までみると、ああ、これはおかしくなるべくしておかしかったんだな、っていうのが分かるんだけれども。
最初から、何かおかしい。
それは叙述トリックや結論のためにひかれた伏線によって生じるのではなく、それが成り立つような世界観を醸成させるために全体全体に漂わされている雰囲気の話なんだけれども。



なにかがおかしい。



実は大豆で作られた鶏肉の唐揚げを、「これ実は唐揚げなんですよ」って言われて食べているような気分。
自分はあんまりミステリとか読まないので、これが謎解きとしてどれだけ反則なのか合法なのか分からないんですけれども、物語の作り方としては本当に反則ですね。隻眼の探偵少女、御陵みかげのキャラクターと魅力を味わってもらうためだけに、すべてのキャラクターと謎と、舞台設定が用意されている。あと御陵みかげは、最後まで読むと完全に闇落ちヒロインなので、闇落ちヒロイン好きはぜひ読むべきです。あと、ドM属性がある人間もぜひ読むべきですね。そういう(性癖的に完結する)ラストへ向かって、かなり丁寧にすべての状況が作られています。
但しトリックの方は結構ムチャクチャなので(トリックが成立しないという意味ではなく)(なんというかパワー系)推理小説好きはたぶん怒ると思う…。どうなのかな…たぶん怒るんじゃないかな…。ひぐらしのなく頃に、よりは酷くないからそれに耐えきれた人間は大丈夫じゃないかな……。






以下ネタバレを含む感想です

  • 色々と作中でキャラクターの対比が行われていて、それがすごいうまい。主人公二人が肉親に対して不審と憎しみと絶望を感じているのに対して、身内に身内を殺した殺人犯がいるかもしれない琴折家の人たちは、仲が悪い部分もあるけれども、結局家族に対して、すごい大事に思っているという対比がすごい良い。
  • あと、家を継ぐとかそういうタイプの何か。
  • 前編と後編で18年の年月が経っていて、それで琴折家がどのように変わったのか、っていうのが分かるのもいい。人の、家族の歴史が描かれるのは個人的にすごい好きです。赤朽葉家の伝説とかベルカ吠えないのかとか好き。
  • ヒロインが、実の父親に2歳の時に左目をくりぬかれるというさらに属性モリモリなところがいいです。結局父親は超ベタぼれだった母親のスペアくらいにしか娘を観てなくて、だから、おなじにするために目をえぐったっていう。
  • 母みかげと娘みかげを、よく似ているけれども全然違う萌えキャラとして描いていて、一粒で二度おいしい感じ。
  • 実際、どこら辺からアレかっていうと、武術の達人である山科恭一を後頭部からの一撃で屠ることができる、っていう点で、犯人はもうほとんど一人に絞られてしまうんだよなあ…。
    • 但し、その殺害の武器とかが最後で明かされるんだけれども、その装備の隠し場所が開かされるので、それで、ウヒャーってなる。そうだよね、袴だもんね。
    • 袴の中にナタ収納。いつも使ってる扇は鉄扇。(それを普通の扇子のように使う指と手首の筋力)
    • 筋力はゴリラ!頭脳は大人!燃える瞳は翡翠の義眼!1メートル50センチの全身に不整合のエネルギーが満ちていた!名探偵、御陵みかげ!
  • 不整合のエネルギーに満ちているので行く先々で人が死にます。
  • 雑に処理される琴折家の兇業
  • さらに雑に処理される琴折家の伝承を調べている学生の岩倉辰彦。
  • 本当に、ヒロインが邪悪なのが素晴らしい。本当に素晴らしい。なかなかこういう邪悪なヒロインは見ないし、主人公はある意味愛されている感じがある。一応フォローはある。
  • ウヒヒヒってなる。
  • とりあえず数合わせみたいな感じで雑に殺される三つ子かわいそう。

もっともっとネタバレ感想、本当にネタバレなので未読の人は見ない

本当にヒロインがドSで素晴らしい。暴力を振るうことに躊躇がなくて、それを完全に隠ぺいする能力を持っていて、そして本人の欲望が、“世間から一目置かれる立派な探偵になりたい”っていう目的だった時にどんな惨劇が産まれるかというお話。けれどもそういう本人のトリック自体が話のテーマではない。
そういうヒロインに“使い勝手のいい道具”にされた人間がどんな末路を送るのか、というのが、このお話で、それはもう悲惨なことになるよ。1部と2部構成になっていて、両方とも、スガル村っていうところで起こったその村の生き神様を代々つかさどる“琴折家”で起こった凄惨な事件の話なんだけれども、とりあえず三つ子が首を斬られて死ぬ。そりゃあもう、コロンコロンと首を斬られて死ぬ。犯人は偽の手がかりを残していくのでそれに翻弄される隻眼少女探偵、っていう体になっているのだけれども、2部の最期に「実際は全部そのヒロインが父親を殺すために仕組んだ自作自演」ということが明らかになる。1部で、初めての自分自身の事件に緊張しながら、目の前で人が死んだり自分の推理ミスのせいで、さらに殺人が増えたり、自分の父親が殺されたりして、震えたり傷ついたりしていた少女、が実は主人公を発情させるために本人が仕組んだことだってことが明かされて、なんというかすごい。その主人公を選んだ理由も、“こいつもうすぐ自殺するし、あとくされの無い自分の娘の種としてちょうどいいわ”っていうだけの理由。コロンコロンと人を殺すし、自分の身体(性的な意味で)にも頓着しないし、サイコパスというか、一つ下のレベルで人間が完成されている。目の前で人が死んでいても、バイトのことを考えるみたいな後期金田一の美雪みたいな感じの壊れ方を登場当初からしていて、それを自分でコントロールしているという動く闇みたいなヒロイン。たまらないですね。

隻眼の少女

隻眼の少女

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はてな村奇譚上

はてな村奇譚上

最近のことなど

はてな村怖い怖い

最近、なんだかインターネットが昔の殺伐とした感じに戻ってきた感じがします、怖ーい。なんとなくだけど、そういう気配がある。

最近のこと

FGO始めました。始めさせられました。頑張ります。

amazonプライム

amazonプライム会員が超お得で便利!マンガで分かりやすく説明します! - orangestarの雑記
この記事からamazonプライムを始めた人が二人しかいないんだ。こんなにアクセスがあったのに…って思ったけど、この記事を読んでamazonプライムを始めようと思う方がおかしい。当たり前の事実だった。

仮面ライダー555観終わった。

むちゃくちゃ面白かった!
海堂いいな。
あと思いっきり鬱エンドで(メリーバットエンド)でこれ、当時の幼稚園児~小学生低学年は見せられたのか…きついな…って思った。

ブクマ欲しい

炎上は怖い

はてなダイアリーが終わる

まだ、新規開設ができなくなるだけだけけれども、着実に終わりは近づいている。はてなブックマークの有料サービスも終了するし。
はてなカウンターも併せて終了するということで、困ったなーって思ってる。
googleのアクセス解析もつけているけれども、分かりやすさとか、“これくらい分かればいいんだよ”の雑な需要をはてなカウンターは満たしてくれていたので、なくなると結構不便。あと、サイトの総合アクセス数もわかんなくなるし。
昔は総合アクセス数がサイトの力の指標になっていたんだけれども、もう、そういう時代ではなくなったってことかな。ブクマ数もそんなに評価の指標にならなくなってるのかもしれない。
色々はてなは変わっていくけれども、なんで、いまだにはてな匿名ダイアリー(増田)はラボ預かりなんだ…。正式サービスにできない理由でもあるのか…。開発した人間がいなくなって誰も触れなくなってるのか…。

読者登録数1860行きました。

ありがとうございます。次は2000目指して頑張ります。なんか、こう、適当なことしたいな。頑張ります。

色々あるけれども自分ははてなが好きなので

色々と頑張ってほしい。あと、時代遅れのサービスでもできるだけ、使わせてほしい
はてなダイアリーは、メモ、ネタ帳ツールとしてとても便利なので、ずっと使えるようにしてほしい。JAVAなく動くなんて素敵なんや。軽いし。

実際のところみんなもっと気軽にブクマしたらいいんじゃないかな

拡散するためのツールとして使ってもいいんじゃないの?twitterのRTみたいな感じで。実際にそういう使い方も想定のうちなんじゃないかなソーシャルブックマークって。