orangestarの雑記

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映画「リング」ネタバレ感想

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(このイラストは無料イラスト かわいいフリー素材集 いらすとや)からお借りしました)


ネタバレもなにも、みんな知ってることを前提で話を進めるし説明するつもりのないただのメモです。


自分の中でリングって、もうホラーとして完璧すぎるくらいのガジェットづくりをしていて、もう、これを超えるホラーはこれから世に出ないんじゃないかって思ってる。



ホラー、怪談、都市伝説に必要な要素が全部詰まっていて、そしてそのすべてに新規性があり、それぞれの要素が必然性をもってからみ合っている、という本当に奇跡なんですよ、リングっていう映画は。

要素1:恐ろしい(魅力的)モンスターの貞子

モンスターが生理的にクル感じになっていてよい。黒髪の長い女が白い病院服みたいなのを着てずぶ濡れになっている、というのは相当に怖い。それなのに、貞子というモンスターがフューチャーされていくたびに、どんどん普通に異形になり最後は漂流教室みたいになっちゃって…。
“貞子”の怖さのコンセプトって(テレビとか井戸とか除くと)“這いよってくる”ではなくて、黒髪の長い女がいつの間にかスタンドバイミーしてる怖さなんです。
ホラーにとって魅力的なアイコンとしてのモンスターを作れるかどうかって、印象に残るとかも含めてすごい重要で、その点貞子は120点のキャラクターです。

要素2:感染というギミック。時間制限と“自分が誰かに伝えないといけない”という設定

これは、不幸の手紙、夢系の怪談や、鹿島さんというもともとあるものでもあるけれども、“話を話す”ということが死を解除するための条件になっているため、どんどん感染が広がっていく、というのが素晴らしい。

異界への扉としてのテレビ、そして有線電話

これは液晶テレビや携帯電話ではだめで、実際に這い出てきそうな感じのあるテレビでないとダメ。ビデオを見た後にかかってくるのも携帯電話ではだめで有線の固定電話でないとダメ。だって携帯電話では着信元が出るし、着信音が設定された着信音だし、あと、もともと線がつながってない(電波でやって来る)ので、“なにかをたよりにしてここまでとどいてくる”という感じがない。固定電話って、携帯電話と違って“生活に割り込んでくる”という感覚が大きいんですよ。今の世代の人には分からないかもだけれども。あと、更にいうとDVDではだめで、ビデオデッキでないとダメ。あれだけのサイズがあると“中に何か入ってる”感じがあるし、アナログなのでさらに上書きできる媒体なので、“しらないうちにデータが入れ替わってる”雰囲気がある。良い。

井戸、という、恐怖をあおるギミック。

ここら辺が、もう生理的に怖い、何か出てきそう、って感じがする。


こうして纏めてみると、感染のギミックのほかは
“何か出てきそう”“なにかはいってそう”というところに力点を置いて色んなガジェットが仕込まれていることがわかる。そういう身近にある不安感をうまく組み合わせて、その中心に“貞子”という魅力的なモンスターを配置してる。貞子が、多分生前は美しい少女であった、みたいな設定もまたいいんですよ。ドロドロの化け物よりも、美しいものがゆがんで醜くなった化け物の方が、すごみがある。


そんな感じで、自分は、“リング”はホラーの中の最高傑作だと思ってます。


(他、RECとか、ノロイとかもいい感じで怖いと思うけど、これはまた別の種類なので。ここらへんの話はまた次のときに)


リング (Blu-ray)

orangestar.hatenadiary.jp

25人のキャラクターが同時に登場して活躍する物語の作り方

シナリオの話、継続は力だなって思った話。

アリスインプロジェクト「クォンタムドールズ」観劇感想 - orangestarの雑記
の話のおまけ的な話。
(id:screammachine)麻草さんのシナリオがすごいって話。




舞台「クォンタム・ドールズ~量子境界の遊歩者~」主題歌「虚数のインフレイション」



クォンタムドールズのシナリオって本当にすごくって、25人のキャラクターをそれぞれ個性を作ってキャラを立たせながら、そして、25人のキャラクターをそれぞれちゃんと見せ場を作り、3つくらいの話を同時並行で動かす、っていうのはなかなか出来ない。っていうか、してるのを他で観たことがない。
2時間の舞台で、25人。単純計算すると一人あたりの持ち時間が4分という状況なんだけれども、多分自分が書くと、4分ごとの持ち時間を其々ひとりひとりが消費するってことになるんじゃないかなって思ってしまう。
あと、キャラクターのストックがすごい多くって、主人公の阿良木明里はナウシカみたいな、世界を救うというでっかい目標を臆することなく実行できる、そしてその結果世界が滅ぶことになっても、それを実行する行動力を持ってるタイプの主人公なんだけど、これってなかなか内部にストックで持ってる人っていないと思う。
あと、キャラ配置が神がかっていて、榊さんっていうOLみたいなキャラクターがいるんだけど、彼女がいると、それだけで、大人の大人の目で見えてる世界と子どもと少女の万能感と世界を変えれる感じの勢いのある世界って言うのが対比されていて、ここにこのキャラを配置できるかどうかで、物語の広さが変わってくる。すごい。あと、大城美雪と美鈴のジェロニモっぷりとか。必要。その場にその設定の人間がいるだけで、場に意味が出来るっていうののキャラ配置がとてもうまい。
シナリオも3つくらいのプロット(それぞれの物語)が同時に複雑に絡みながら、最後に一つの概念に集約されていくし、そういうシナリオってどうやって書くんだろう。プロットとあらすじの組み方ってどうやってるんだろう。シナリオの書き方とか、そういうの教えてほしい。




って思って、どうやってるのか、本人に聞いてみた、ら。





「いや、なんか、特に考えずに書いてるから良くわからない」


「そうか」
「やっぱり、それぞれキャラクターの物語と因果をきめてから、それを組み合わせて編み物をつくるみたいな作り方してるの?」


「いや、3Dプリンターみたいにバーッて書いてる」


「そうか」


「だから小島くん(id:orangestar)がキャラクターのそれぞれの話をキャラクターの説明のところで書いてくれて、ああ、そういう話だったんだわかりやすい、って思ったよ」


「それはおかしい」


聞くと、もう、20歳くらいの頃から、もう20年そういう『舞台で5~20人が同時にでる芝居』の台本を書いてるっていうこと。




継続は力なんだな、っていうのを強く感じた、っていう話。



追記:一応、コツみたいなのも聞いてきた

頭の中で、物語を動かしている時、2人とかが会話をしてると、そこに、勝手に3人目が、「それちがう!」とか「あ!そういえば!」とか全然違う話とか脇道の話をしてくるらしい。(もうオートモードで脚本を書いてるらしいので、そこらへんをあえて説明すると)
「A」or「notA」って選択肢の中で、その他の話をしてきたりアイデアを言ってくる人間を入れることによって、物語を動かしていく感じ、らしい。
そういう作り方が、『2人の人間の行動の組み合わせで動く物語』ではない、『多くの人間が行動してその結果、最後の状況まで進んでいく物語』の作り方のコツではないのかな、って思った。





そのアサクサさんが参加しているアリスインプロジェクトの今後の予定として

2/24~28「陰陽よろず屋 開業中!(仮)」

作演出はボブジャックシアターの扇田賢。(アリスインデッドリースクールビヨンド演出)
劇場は築地ブディストホール

3/11~13「戦国降臨ガール・インターナショナル」なんとアリスインプロジェクトが香港上陸

そして、GWにも、また何かを予定している…らしいです。

もしよろしければ足を運んでみてください。

バルス注意報

承前
www.itmedia.co.jp




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バルスを楽しもう!



あともうひとつ1月31日コミティアでます

スペースT27aみかんの星
ビッグサイト東5・6ホール
です。よろしくお願いします。


今回の冬コミの新刊と、あといくらか持って行きます。


奇譚と、猫を殺す仕事などを持って行きます。
はてな村奇譚下
はてな村奇譚上
猫を殺す仕事


それではみなさんよいバルスを。