orangestarの雑記

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『プロメテウスの石皿』見てきました。7/1 14:00回

昨日、麻草さん(@asakusan)脚本演出の プロメテウスの石皿 の公演に行ってきました。面白かったです。本編も面白かったけどそれ以外のところも面白かった。(そこも含めてこの公演なのだけれども)。今まで噂には聞いていた新宿眼科画廊に初めて行きました。眼科とついているけれども眼科ではない、様々なアーティストの展示をする一風変わった画廊で、そこの地下階で行われた公演でした。

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とにかく、会場が狭い。間口が2間しかなくて、奥行きも6mくらい。天井も低くて照明も吊れない。
とにかく客席と舞台が近い。そういう場所でどういう演技プランをやるのか、なにができるのか。そういう諸条件から逆算して作られたような舞台でした。
間口を舞台にしては成り立たないので、どこに舞台を設けるかの工夫や、天井の低さから『舞台の段を作れない&照明も用意できない』のにどうやって空間を仕切るかとか。

実際の舞台の配置の仕方は、別図のようになっていて、お客さんが25~30人程度しか一公演に入れないという、本当に贅沢な舞台になってました。贅沢だった。


(※元画像は新宿眼科画廊のホームページからお借りしましたhttps://www.gankagarou.com/price/

いい意味で中学、高校の演劇部の学校公演のような舞台でした。
演技、演出の種類というのは客席との距離(距離といっても物理的な距離と精神的な距離がありますが、大体これはは比例する)によって、演技の種類というのは変わっていって、例えば、オペラや大劇場でする演技と、小劇場の客席との距離が近い演技では全く違ってきます。

ざっくり書くと遠距離では大仰な演技、近距離では誇張のない演技。適切な物理的距離と精神的距離を調整しないと、とても不自然でちぐはぐな感じになってしまう。そして、この舞台ではさらに近くて、舞台と客席を隔てるものはガムテープ一枚しかない(段差すらない)

舞台が舞台であるには『ここからここが舞台で、ここで行われていることはそちらとは世界が区切れていますよ』という『宣言』が必要で、それがガムテープ一枚しかない。照明で行われることもあるが、照明も場を青くするのとと奥に飾ってある仮面を照らすものしかなく、今回はそれは使えない。

なので、その宣言を成り立たせるために演出でいろいろなことが行われていた。それが面白かったです。冒頭から入る異質な歌唱や全員で仮面をかぶって『宣言』を行うことなど、『ここは異質です、この線から先は異界です』を成り立たせるためのアイデアがささやかながら色々ちりばめられていて、勉強になった。

結果的にそれが、中学生、高校生の学校公演で感じる異質さに似ていて、(おそらく類似の効果をもたらすために収れん進化したのだと思う)それがとても興味深かった。

公演後のトークで、練習期間がとても短かった、合計9時間くらいしか来れない子もいた、新人、ほぼ初舞台の子が二人いる、ということを聞いたのですが、それを感じさせないくらい女優の皆さんの演技もよかったです。歌唱パートが大変だったということだったんですが、作品の雰囲気を象徴していてあって本当によかったなと思いました。公演後に朗読劇があったのだけれども、なんと、当日の朝に台本が上がったということがトークで明らかにされました。ほぼ初通しのような状態で朗読劇が始まったのですが、みんなよどみなく、キャラクターが入った状態の掛け合いも自然で、「ああ、本当に、プロだな…」と思わされました。プロの仕事だった。



舞台で使われた仮面や使われなかった仮面の展示が1階でありました。(坂藤秀峰さん(@mojya2_syuho)プロデュース)

そちらもよかったです。本当によかった。展示の場所は新宿眼科画廊の1階の奥でちょっとわかりづらい場所にあるんですけれども、一見の価値ありです。エキゾチックだったり厄かったりと。あと、オーパーツ的な仮面があったりと、非常に面白かったです。