orangestarの雑記

小島アジコの漫画や日記や仕事情報など

スポンサードリンク

ブランコ乗りのサン=テグジュペリ感想


りちょうとえんさん//怪物は夢を見ないkindle電子書籍で発売中です

ブランコ乗りのサン=テグジュペリ

ブランコ乗りのサン=テグジュペリ

紅玉いづき先生の小説。
ずいぶん前に発売されたのだけれども、感想をかくタイミングを逃したまま、なんか、ずっと感想を掛けなかったので今更だけれども書きます。
おはなしとしては、スナッチャーみたいな近未来の世界観に、サイバーパンク要素を完全に抜いたみたいな世界観です。よく分からないな。近未来の、埋め立て地に作られた経済特区で、カジノとか、ショーとかサーカスとか、そういうエンターテイメントにあふれた、白昼夢のような街の、少女サーカスという狭い世界で繰り広げられる、本の小さな物語のおはなしです。
そのサーカスでは、団員の女の子は、ブランコ乗りのサン=テグジュペリや猛獣使いのカフカ、歌姫アンデルセンなどの、芸事とそれに関連する名前を“襲名”して、大きな舞台の上で、少女サーカスを演じます。そのサーカスの観劇はアッパーソサエティの人しか来れないような場所で、とにかくチケットが高かったり。ニューヨークのオペラなんかを想像されるとよいでしょう。
主人公はブランコ乗りのサン=テグジュペリの双子の妹で、サン=テグジュペリが事故で足が動かなくなり、その代役として、姉の足が治るまで、姉の代わりにサン=テグジュペリとしてブランコに乗る。そしてそこで巻き起こる事件とは。
という感じのおはなしです。自分の文章が汚いので、一体何を言っているのか分かりづらかったらごめんなさい。全体的な乗りは、オペラ座の怪人みたいな世界観と物理法則だと思ってもらえるといいです。ちょっと違いますけれども。
ジャンルを説明する時に、一体どういえばいいのか、紅玉さんの小説は困ります。
ミステリー要素もあるし、冒険といえば冒険。少女の成長物語といえばそうだし、ロマンスといえばそうです。でも、そのどれでもない。そういうのをすべて併せ持った壮大なおはなしでもない。それぞれの要素は物語の主軸ではなくサラリと物語の外側を流れる川のように、サラリと流れていきます。一番近い要素を言えば、狭いサーカス内の人間と少女を押しつぶすために作られた、サーカス学校のシステム、そしてその中で繰り広げられる少女たちの物語、でしょうか。しかし。だがしかし。少女たちは別に心の交流をするわけでもなく、個々人が一人、自分の足で立ち、誰にも頼ることなく、襲名した名前に恥じないように、サーカスの演目を演じ、日常生活を送ります。少女同士に交流はない、ただ、自分と同じような境遇で戦っている人間に対して、奇妙な友情のような感情を持っている。そういう物語です。不完全で、不自由で、未熟な少女たちが、舞台に立つ、ただそれだけの為に、自分の今までの人生と、これからの人生、命そのものを捧げて、だから、少女たちは美しい。
その一瞬の美しさこそがこの作品のテーマで、そして、そういう一瞬の輝きを、少女が、世界で一番美しくなる一瞬を描かせたら、紅玉さんは、当代一の才能の持ち主だと思う。




ブランコ乗りのサン=テグジュペリはそういうお話でした。