orangestarの雑記

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お芝居観てきた。アリスインクロノパラドックス

アリスインクロノパラドックス
※だいたいこんな感じ

お芝居観てきました。アリスインクロノパラドックス(id:screammachine)麻草郁さんが脚本を書いた作品です。すごいよかった。色々と整理できないものがあるので、箇条書きにしていくつかまとめて行きます。

最初に感じたのは、ああ、悔しいなあ自分もこんなの作りたいなあ、でも作れないなあ悔しいなあっていうこと。

あらすじ:未来の世界かTP(タイムパトロール)がやってきて、時間を修正しようとしたらさあ大変、色々あってタイムパラドックスが起こりそうになってしまいます。弱小演劇部十数人を巻き込んだこのごちゃごちゃをまあるく収める事ができるのか!?

すいません適当書きましたが、まあ粗筋的にはこんな感じ。特にすごい新しいとか、“演劇!前衛!”っていうのでもなくて、高校生が演劇部でやるのにちょうどいいような、そして、実際の内容も。ああ、でも、これってなかなか出来なくてすげえなあって思う。すごい楽しい感じが伝わってくるし、女の子のかわいい感じが出ててすごくよかったです。

アイドル舞台は学芸会であるべき

  • アイドル舞台、の元祖は宝塚なんですが、宝塚の基礎コンセプトって学芸会なんですよ。
  • 昔、阪急電車が出来た時に、阪急電車宝塚線沿線にはなにもなかったんですよ。そんなん失敗するにきまっとるやろwwwって言われてた。でも小林一三っていう阪急電車の創始は、これはイケル!と。で、その計画っていうのが、梅田〜へ向かうところに住宅地を作って電車通勤の概念を作って、そして宝塚線のはしっこに遊園地と宝塚歌劇を作って、今までは大人だけの遊行場だった演劇とかを“おんなこども”でも楽しめるものを作る、っていう。でこれが成功して今の宝塚周辺があり、また、東急とかその他の首都圏と新興住宅を結ぶ路線のモデルにもなりました。郊外へ走る線の端っこに、遊園地(いまではもうだいぶ跡地になりましたが)があるのがその名残です。話それた。
  • で、学芸会、って、女の子の魅力を出すのに、一番いい、舞台システムなんですよ。

でも狙って学芸会なんて出来ない。

  • だって学芸会って未エンターテイメント。でもエンターテイメントとしてそれを提供するってなんか矛盾パラドックス。
  • お金と時間と、才能と、素材があれば、完全にコントロールして安定供給できるけど、基本、不安定。
  • で、多分、このアリスプロジェクトって奇跡が起こってる。
  • 知り合いだから分かるんですけど、アサクサさんの脚本って、出来上がりのしっかりした完成予想図から逆算して脚本に落とし込んでいくような感じの本で(アニメ脚本とかそういうのに近いかも)、でも、それからだと、学芸会みたいなものってできない。
  • 演出の方の演出が、役者の持ってる部分を引き出す風に演出してるんじゃないかなって思う。それによって、物語自身の部分の厚みと、その背後にいる、舞台裏の女の子たちの日常の厚みがでて、ちょっとすごい事になってる。多分、どっちかの仕事だけでは駄目で、両方でそういうことになってる。
  • というわけで、すげえなあ、そういう仕事したいなあ、でも、なんか、こう、集団作業苦手だしなあいいなあ、って思ったりしたのですよ

あと、余談、ちゃんと物語がSFでした。TPもの。

  • ところで、TPの目的って何なんですかね。
    • SFでTPものってあるんですが、大きな仕組みのガジェットとして作られるだけで、TP自身の目的が語られることってあんまりない。TPぼんとかドラえもんに出てくるTPも、時間遡行者を取りしまる以外の行動が分かんないし。TPでは、時間の流れのなかで死ななくてもいい人を助けるとか、文化干渉したりしてるけど、それって、白人がポリネシアの文化を破壊したような文化干渉みたいなものではないだろうかって思ったりするし。やっぱり今回の物語もそこらへんの理由づけはあかされませんでした。
  • まあでも、多分なんとなく推測。いつもやってる仕事はカンブリア紀までいって石ころを動かしたり、枝を折ったりして少しずつ時間をずらしてタイムマシンの発明される年代を早める云々って話をしてたので、そこから推測すると、やってることはまどか☆マギカのQBと同じような事なんじゃないだろうか。この宇宙のエネルギーは有限で、エントロピーは増大していく、宇宙はいつか滅びるけど、それまでに使えるエネルギーは有限、でも、時間を戻ることは出来る。例えるならその様子は、1本の大きい川みたいなもので、上流から下流までの川の長さと、水の量が固定。TPの仕事は川の流れを破壊しないように気をつけながら川上から順々に水力発電ダムを作っていって、使えるエネルギーを全て有効利用するために活動してるんじゃないかと思った。コペンハーゲン解釈型のタイムスリップもののみ有効ですけどね。
    • 吹奏楽部の部長が出オチでした、最後出てくるだけでウケが取れてたのはおいしいと思った。

とにかく面白かった、ですよ!


追記:一緒に見に行った嫁が「カンブリアにいって枝折ったり、石ころを動かしたりは笑いどころなのになんでネタバレすんの!」と怒っておりました。普通にSF的なガジェットだと思ってた。SF者とそうでない物のカベがこんなところにも……。