orangestarの雑記

小島アジコの漫画や日記や仕事情報など

ブギーポップミミクリーズ イミテーションゴールド(2次創作です)

夏に同人誌を出そうと思ってプロットをきったんですが、これ、どう考えても書く時間ないよね、ということで、ここでこの状態(プロット)で公開することにしました。供養。各章のタイトルを洋楽から引っ張って来たりして、20年前の杵柄がよみがえった感じ……。アニメは4話からグンと面白くなるので、4話までみてください。なんなら4話から観てもいい。



主人公の木下京子ってい子は、~笑わない~で、霧間凪にマンティコアの疑いでいきなり襲い掛かられて左腕をねじりあげられていた人です。



吟遊詩人の歌

木下京子が夜のバイトまでの時間つぶしに屋上にあがったとき、黒い筒のような恰好をした人物と出会う。それは、演劇部の有名な先輩の紙木城直子だった。演劇部のあとに屋上でヤニ休憩をしていたのだった。紙木城直子は容姿端麗成績優秀で人当りもよく、泣いている人がいたらほっておけないような性格で、まさにヒロインといった感じ、だから学校中の女子から嫌われていたのだった。もちろん、木下京子もこのあったこともない先輩のことが嫌いだった。
木下京子には秘密があった。秘密のデートクラブで援助交際をしていたのだった。草津秋子やら、遊ぶ周りの友だちが家が太い子たちばっかりで、交際費が必要なのだった。
紙木城直子と他愛のない会話をする。その中にブギーポップの話があった。「先輩、ブギーポップっていると思います?」
ブギーポップとは学校の女子の間で噂になっている“その少女が人生の一番美しい瞬間に、これ以上醜くならないように殺しに来てくれる死神”だった。
「私はいないと思います(もしいるのならなんで私を殺しに来てくれないのだろう)」
木下京子のデートクラブでの値段は、始めたころの10000円から8000円に下がっていた。目新しさと新鮮味がなくなって“商品価値がさがった”のだった。
デートクラブで少女たちは、源氏名を名乗る、一緒に登録している少女たちは、自分の嫌いな人間やむかつく奴の名前を自分の名前にしていて、木下京子も“紙木城直子”を名乗っていた。
それから、何回か、屋上で、木下京子と紙木城直子は会うことがあった。会うとき、いつも、紙木城直子は影帽子の格好をしていた。
ブギーポップはどうやって人を殺すのかとか、そういう都市伝説の話や、好きな男子の話、教科の先生の話しとか。
恋の話をしている紙木城先輩はとても綺麗で可愛くてなんだかそれがすごくイラついた。
「ブギーポップはが実在するなら、今わたしを殺しに来てくれるはずなのに。」「ブギーポップがいるとしても今は来ないよ、京子ちゃんはまだまだきれいになれるから。好きな人が出来たら。恋は乙女をきれいにするのよ」そういって彼女は「いのち短し 恋せよ少女」と歌うのだった。


そして学園祭の日が来た。
学園祭での演劇部の舞台は、一言でいうとつまらなかった。ブギーポップの正体は自分の中の大人になることへの不安感、っていう思春期をこじらせた人間が頭で考えたこざかしいものだった。


先輩に感想を言おうと探していると講堂の隣にいるところを見つけた。声をかけようと思ったら、誰かと話している。靴の色から1年生の後輩だとわかった。紙木城先輩の様子から、アレが例の「紙木城先輩の思い人」なのだと思った。遠くて声は聞こえないが舞台の感想を言われて喜んでいるらしい。その横顔をとても美しいと思った。


屋上。
木下京子が扉をあげて外に出ると、紙木城直子が鼻歌を歌いながら踊っていた。でたらめな踊りで、なんだかそれがとても幸せそうで、だから、声をかけるのをやめて、踊りが終わるのを待っていた。ひとしきり踊った後、紙木城直子が木下京子がいるのに気が付いて、顔を真っ赤にして、なんでいるならいるって声かけてくれなかったの?といって怒る。「先輩があまりにも楽しそうだったので」
「先輩ってエーコーみたいですよね」「えーこー?」「ギリシャ神話に出てくる妖精です。ナルキッソスに恋い焦がれて恋の病で死んだんですよ。最後に声だけが残って、それがコダマの始まりなんですって」「えー恋がかなわなくって死ぬのってダメじゃない?まあ、妖精っていうのはあってるけど」
「先輩って悩みなさそうでいいですね」
「えー悩みくらいあるよー」
「恋の悩みは悩みのうちに入りませんよ」
「うー、えー、そうなのー?」


文化祭が終わると先輩は屋上へと来なくなった。私も自然にいかなくなって。それから数カ月して、後輩の草津秋子が失踪した。父親の会社が倒産して、家はもうボロボロだったらしい。突然いなくなって、最初は霧間凪に殺された(私もそのころ霧間凪に襲われたので)のかと思ったのだけれども、実家の話を聞いて、「ああ、そうか」と思った。そういうことなのだ。


時を同じくして、紙木城直子もいなくなった。そして、彼女の家が離婚調停中で、ぐっちゃぐちゃだということを聞いた。もう何年もそんな状態で、近所でも有名だったらしい。そういうときに彼女は、あんな顔で恋の話をしていたのだ。みんな、この”世界”にすりつぶされて死んだ。あの紙木城直子も同じようにすりつぶされたのだ。


久しぶりに屋上へ上がる木下京子、しかしそこに彼女の面影はなく。柵にもたれかかって、彼方を見る。そこで、彼女が歌っていた歌を、口ずさむのだった。




月影の騎士

高校2年生の小泉栄二はある日奇妙な夢をみる。自分と同じ顔の誰かに襲われて殺される夢だ。驚いて目を覚ますとなぜかパジャマが血まみれになっている。その日から奇妙なことが起こり始める。以上に視覚や聴覚、五感が良くなった。力も強くなった。
集中するとかなり遠くの声も聞こえるようになった。悲鳴や助けを呼ぶ声、非常ベル。そして、彼は小さい時からの夢を実現することにする。即ちー「正義の味方」
性格も明るくポジティブになり、家族からも人が変わったようだと思われる。
街中で不良やひったくり、犯罪ハイエースなどを倒していくうちに、力のかけ具合で“超人ハルク”みたいに変身できることに気づく。変身ヒーローの誕生だ。交通事故の車両を助けたり、火事で取り残された人を助けたり。町で、都市伝説のように噂になる。
と同時に、異常な空腹感にもさいなまされる。いくら食べても、その空腹感がやむことがない。時間がたつにつれ、それはどんどんひどくなっていく。ある日、事故現場で被害者の血をなめることがあり、そしてその時の多幸感と満足感から、その異常な空腹感が「食人衝動」であることに気づくのだった。


それから、その死ぬほど苦しい空腹感を埋めるために、思い悩み、そして行動するようになる。その嗅覚を使って、死んだばかりの孤独死の死体や、自殺者、行旅死亡人を探して食べるようになる。人目を避けて。隠れるように。
ある日、これから死ぬ人間の強いにおいを感じてその現場に行く。それは自殺を試みた女性だった。手元には瓶があり、おそらく農薬で使われている毒物だ。ゆっくりと神経と内臓を破壊しながら、解毒のできない、そういう毒があるのだ。栄二の目から見ても内臓がぐちゃぐちゃになっていて、腐敗してくる臭いが流れてくる。もう助からないのは明らかだった。栄二が助け起こすと、「死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない」と繰り返し、取り返しのつかないことを後悔しているのだった。その30分後に彼女は死んだ。
彼はもう、昔のような正義の味方ではなかった。町を歩いているときに、路地から悲鳴が聞こえてくる。誰かが暴行をされているのだろうけれども、一瞬びくりとして通り過ぎるだけだった。


それでもだんだんと町から死体がなくなっていく。それでも死体を求めて、町を歩くしかない。ふと、どこかから濃い死臭と、女性の悲鳴の音が聞こえてきた。


The Dark Side of the Moon

木下京子は、相変わらずデートクラブで紙木城直子と名乗り“仕事”を続けていた。この日、木下京子は”当たりを引いた”と思った。一晩で10万払うという客が付いたのだった。若く、身なりもよかった。背もそこそこ高く、顔つきはどこかでみた芸能人に似ていた。高級マンションの最上階すべてが彼の部屋らしい。心の中でガッツポーズをして、エレベーターを降り、部屋の扉を開けると、そこには地獄が広がっていた。
男は猟奇殺人者だった。売春婦を誘い込んで、生きながら解体するのが趣味の男だった。部屋の中には今まで解体した女性がオブジェになって展示されていた。マンションは防音がなされていて、いくら声をあげてもどこにも届かないようになっていた。解剖台に拘束される木下京子。卑猥な言葉を言って命乞いをすれば考えてもいいといわれる。最初はそんなことをするくらいなら死んだ方がましだというけれども、軽く刃を突き立てられただけで、心が折れて情けない悲鳴を上げて、命乞いをするのだった。
殺される直前、その猟奇殺人者の頭が吹っ飛んだ。正確に言うと”突然窓ガラスを割って飛び込んできた何か”にもがれた。木下京子が気を失って目を覚ますと、その飛び込んできた何かはその猟奇殺人者の死体を食べていた。ものすごくつらそうな顔をしながら。
なぜか妙に冷静になった木下京子は、逃げ出そうとするその怪物を呼び止める。そして、怪物(小林栄二)の今までの事情を聴く。そして、木下京子は、小林栄二にひとつの提案をするのだった。木下京子はこのクソッタレな世界を壊してくれる怪物に出会えた、と思った。少年に、“世界を壊す”ことを提案する。
「“人を削って平気な人間”を選んで殺して、この世界をよくする、そういう殺しても構わない人間を選んで殺そう。それは悪いことじゃないよ。わたしが、殺してもいい人間を選ぶから。一緒に世界を壊そう。」

(ここで、木下京子は、彼に対しても、紙木城直子を名乗っている)

猟奇殺人者の部屋には大きなピアノが置いてあり、おもむろにピアノを弾く木下京子。「なんて曲」「新垣隆って人のピアノのためのソナタ」
「私の小さい時の夢の話」をする、ピアニストになりたかったけどなれなかった話。小林栄二の、正義の味方。結局悪の秘密結社なんてなかったけど。
「もっとわかりやすい曲を弾いてよ」きらきら星「これ、昔は恋の歌だったんだって」



合成人間EL&Pの外見は2mを超える長身に、不釣り合いなほど太く長い両腕がついている。
合成人間EL&Pの目的は統和機構の施設から逃げ出した、マンティコア”ども”の捕獲であった。
合成人間EL&Pの能力は、記憶と思考の完全なコピー&ペースト。そして、ターミナルを介してのコピー同士の同期である。
廃ビルのような場所でサラリーマン風の男の脳をいじっている。そばにはゴスロリ女子(EL&Pの端末の一つ、チェロのケースを持っている)
サラリーマン風の男の頭を押さえている。捕まえながらお話。サラリーマンはオッオッと情けない声を出している。身体にいくつかの注射、今、この場で、“合成人間”を作成している。

「なあ、悪の秘密結社ってあると思うか?」「この世界を裏から支配している大きなシステムだ」「実はあるんだよ」「その名前は統和機構という」「合成人間という怪人を使って、人類の進化に関する研究をしているんだ」「その統和機構の研究所から数年前人食いの化け物が逃走した」「一匹だけじゃない、何匹もだ」「俺の、俺たちの仕事はその化け物を見つけ出して、回収もしくは破壊」「そして、それは、今からお前の仕事でもある」サラリーマン、立ち上がり「ああ、よく分かっている」

合成人間EL&Pは、生殖ができない。ただし、生き物の本能としての”自分のコピー”を作りたいという欲求はある。合成人間EL&Pはこの町中、世界中に自分のコピーをばらまきたい、世界を自分一人にしたい、という、”夢”があった。





どこかのビルの屋上、ブギーポップ。口笛を吹いている。「やれやれ、僕がでてきたということは」「どこかで世界の敵が生まれたっていうことだな」

放浪者

木下京子と小林栄二、二人は家に帰らずに「殺してもいい人間」を探して町中を飛び回っていた。
ヤクの元締め、ヤクザの親分、マルチの親、悪徳企業の社長。
しかし、そのどれにも家族がいたり、その人間を大切に思う人間がいたりして、殺せないのだった。
栄二の体が限界に近づく、そこで危険を冒して、”死体”を手にいれることにする。
葬儀場に忍び込んで、これから葬儀が始まる人間の死体を盗もうとするのだった。
栄二に屋上で待機をしてもらっていて、木下が下の様子をみて、タイミングを見計らって盗むという計画だった。
通夜の控えしつので会話「捜索願をだしたら」「3カ月前に死亡してたって」「死体が」「じゃあ、この3カ月のあの子はいったい」「そういえば、急に人がかわったみたいになって」「警察署で特別に冷凍して保管してもらってたの、身元不明の遺体だけどまだ子供だからって」
木下京子、葬儀の写真、死体をみて愕然とする。それは小林栄二だった。


屋上、栄二に京子から電話がかかってくる。だが、それを遮るように屋上の棟屋の陰から一人のライダースーツに身を包んだ少女が現れる。
「なにか手掛かりがあるかと思ったが、本人が戻ってくるとはな、”スカベンジャー”」
霧間凪である。
霧間凪は、ここ数カ月「行旅死亡人」や「孤独死」など身元不明の遺体が出ないことに気づき、独自に調査を進めていた。そして、「行方不明になって捜索願をだしたら、実はその人間が3か月前に死体で発見されていた」という事件を聞き、その時期が大体会うことから『なにかが人と入れ替わっている』『その何かが死体を食い漁っている』と検討を付けた。葬儀には何か手掛かりがあればとおもって調べていたが、ちょうどそこに”本人”が現れたのだった。
「生きている人間に手を出す前に、悪いが倒させてもらうぞ」
追い詰められピンチになって、変身して凪にとびかかる栄二、だが、次の瞬間には天地が逆になって吹き飛ばされていた。合気のような技である。
次第に追い詰めらえる栄二、そこに屋上よりさらに上から何かが降ってくる。
栄二と霧間凪の間に割って入ったのは2mを超える、両腕が奇妙に大きな大男、EL&Pだった。
「悪いがこれは俺の獲物なんでな」といって霧間凪に威嚇の攻撃をするEL&P、その隙に屋上から飛び降りて逃げる。京子と合流して逃走。コンビニの前で合流。混乱と絶望でへたり込む栄二。コンビニの自動ドアがへたり込んだ位置の関係で、開いて閉まってを繰り返す。そこへサラリーマン風の男が声をかける。
「大丈夫ですか?」「え、あ、はい大丈夫です」「辛いでしょう」「いえ、その」「知っていますか?普通の人間にとって餓死って一番つらい死に方らしいですよ?」「?」「私たちが追っているマンティコアは、姿だけでなく記憶も完全にコピーできるタイプだったんですが、そこで間違えて自分の記憶を上書きしてしまったんですね、きっと」「先ほどはどうも、私たちはEL&P」といいます。
気づいて逃げ出す。その先で、少女に見つかる。「あ、ごめん」「大丈夫よ、マンティコア」といって指をさす。そのタイミングで、街中の歩行者、の中に紛れているEL&Pの端末が一斉に指をさす。
「EL&P watching you」
悲鳴を上げて、脱兎のように逃げ出す。


胸いっぱいの愛を

街中は、EL&Pの端末でいっぱいだった。幹線道路や駅にもいると思われるので、バイクに乗って山を越えて逃走しようと考える。一方、ずっと食べずにいた栄二の体は崩壊を始めている。がさがさと砂になって崩れそうな体を、木下京子に隠していた。盗んだバイクで走りだす。
山道。峠。
EL&Pの待ち伏せ。(ゴスロリの端末もいる、チェロのケースを持っている)正面に、“屋上であった奴”がいるのに気づいた栄二。身体ももうボロボロで崩壊が始まっていて、そう何度も力を解放できない。先手必勝。変身して全部の力を込めて全力の一撃をたたき込む。頭に。
ところがノーダメージ。「あん?おい、お前いま何したんだ?まさかこれが全力ってわけじゃないよな?」サーティエイトのパンチ、ボロ絹のようになって吹き飛ぶ栄二。ガードレールを超えて、山肌に。
「ちょっと考えてみろよ、俺は、マンティコアを処分するためにやってきたんだぜ?それがマンティコアより弱いわけがない、だろ?」ゆったりと近寄りながら、栄二に留めのパンチ。山肌が吹き飛んで、町まで揺れがとどろく。後には、人間状態でボロボロになった栄二。ぴくぴくと動いている。「まだ動いているのか、さすがにしぶといな、まあ、そうでないと困るんだけどな」
EL&Pは栄二に提案をする。そのまま、あの町で人間を食い続けろ、と。
自分たちの仕事はマンティコアを捕獲、その間はいくらでも端末を増やしてOK。自分は端末を増やしたい。なので、適当にマンティコアが捕まらないようにして、そして、マンティコアが”この街にいる”という状況を作っておきたい。
そのためには、あの町で”マンティコアに定期的に食事”をしてもらう必要がある。
俺の能力は人間の操作だ。人間のことはよくわかってる。倫理観が邪魔してできないのなら、俺が命令してやるよ。誰かの命令があるなら、無責任に行動ができるのが人間ってやつだろ。俺に命令されて人間を食えばいい。そうついでなら(と木下京子の頭を卵みたいにつかむ)”この女を人質に取られて仕方なく人間を食べさせられている”っていうのはどうだ?お前は何も悪くないぞ。その頭になる前には散々食べてきたんだろ?今更何言ってんだって話だよ?なあ?
「ふざけるな」って怒る木下京子。「絶対に栄二はそんなことをしない、私も許さない」うるせえ黙ってろ、っていって、電撃。「どうした命乞いをしろ、そこのマンティコアに助けてお願いって叫べ」口から泡を吹きながら、それでも、「誰がいうものか」と意地をはる木下京子(上の、変質者のとこの下りとの対比)
”死”が始まっている栄二、自分の体が崩壊していくのがわかる。「俺は、一体何なんだろう…」と自問自答する。小林栄二ではなかった、小林栄二だと思っていた記憶やそういうものは偽物だった。マンティコアだったけれどもその自覚も記憶もない。なんにもないまま、自分はここで死のうとしている。遠くから、木下京子の「栄二、逃げて」という声が聞こえる。ああ、そうだ、俺は、助けなきゃ。

立ち上がる栄二、しかし”変身”する体力もない。EL&P、京子を放り投げて、栄二に留めのパンチを見舞う。その瞬間ー、EL&Pの巨体が宙を舞った。
(栄二の超聴覚で、心臓や筋肉の動作の起こりをみて、動きを先読み、それに合わせるように体を動かして、EL&Pを投げ飛ばしていた。2度、3度、EL&Pの巨体が舞う)、死の直前の異常な集中力のなせる業だった。最後カウンター。栄二の腹部が吹き飛ぶが、EL&Pの頭に刃に変形させた右手を叩き込んで、倒すことに成功する。

倒れる栄二。駆け寄る京子。しかし、道の先にある、あるものに気が付いて足を止める。その視線の先に、黒い影帽子がいた。
ーブギーポップ。都市伝説の怪人。少女がどうしようもなく汚れてしまうその寸前に現れて、それ以上醜くなる前人生でもっとも美しいその瞬間に殺してしまうと言われている死神。本当にいる、という事実。殺される。足がガタガタと震える。

「ブギーポップ……私を、殺しに来たの?」

「いや、君にはもうその価値はない」

ブツリと何かが切れて、「人の価値を勝手にはかるな!」「どういう権利があって、人間の生き死にを決めれると思ってるの!」「私も、栄二も、この世界を敵に回して精一杯戦ったのよ!」「その戦いに、私達の人生に価値がないなんていわせない!」「自分の最後は自分で決める!他の誰かになんて決めさせるもんか!」「殺せるもんなら殺してみろ!」「どんなに醜く変わり果てても、生きてやる!」


左右不対称の顔をして、消える。


チェロケースを抱えて走って逃げているゴスロリの少女。足元をもつれさせて転ぶ。細いワイヤーが光っている。「なるほど、そっちが君の本体というわけか」暗闇から声が聞こえて、おびえる少女。ワイヤーがきらめいて、大きなチェロケースが切断される。中から、電子機器と、人間の脳が零れ落ちる。ああっとちいさな悲鳴を上げるゴスロリの少女。おのれ!と捨て台詞を残して逃げていく。その少女を見逃して「やれやれ今回はただの骨折り損だったな」




夜明け前。

京子の膝枕をされている栄二。足の先からその身体は崩壊を始めている。「目が覚めた?」「紙木城さん、君が無事でよかった」「うん」「実は、私、あなたに謝らないといけないことがあるの」「私は本当の名前は紙木城直子じゃないの」「木下京子」「木下京子っていうの」「お願い、私の名前をよんで」「木下京子」「うん」「似合ってる」「ありがとう」「僕は、僕は誰なんだろう」「私が知ってる」「私の」「ヒーロー」

京子、栄二に口づけをして、そして、朝日とともに、砂になって風に散っていく栄二の身体。

(朝日に照らされた京子の顔が“人生で一番美しい”瞬間のように見えるカット)

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