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JKハル読んだ


りちょうとえんさん//怪物は夢を見ないkindle電子書籍で発売中です

※この記事の読了時間の目安は310分です。


novel18.syosetu.com


内容に対するネタバレを含みますので、是非上記の本編を読んでからお読みください。
15万字程度の短い小説ですので、すぐに読み終わると思います。


JKハル読みました

話題になってますね、JKハル。
とても面白く読みました。


読みながら、“ああ、これははてな界隈では受けないんだろうな…”って思ってた。そして増田で感想を書いている人がいたのだけれども、それに対してのトラックバックが散々で、ああ、もうはてなはダメかもしれんね…って思ってたんだけれども、ブクマでは結構絶賛されていたので、良かったと思った。
本当に良い話だし、文章はうまいし面白いし、スルっと読めるのでみんな一回読んでみて欲しいです。


えーと。
 
 
JKハルに関しては色々と語りたいこともあるし、書かないとならないな、と思うこともたくさんあるんですけれども、ちょっと纏まらないし纏まりそうにないので、いろいろと箇条書きで書きます。



最初に読んだとき、ものすごいうまい文章だと思った。構成もムチャクチャうまいし。途中のカンケリングのエピソードを入れてくるところとか天才だと思った。頭の回転の速いJKの文章と感性の一人称の文章で、これ本当に男の人が書いているのか?って思ってびっくりした。まあ、あれです、殺人をしたことのない人が殺人者の心情をかけない問題を考えれば全然不思議ではないんですけれども。とにかく、すごいって思った。根っこのところに虚無がある人間の話。ただ、生きてくってことに疑問を持たない人、生きてる理由は生きているからだけっていう、そういう生命力の強さの話で、はだしのゲンとか、そこらへんの“生きている人”の話みたいで見ていて、とても元気が出るタイプの話だと思った。野生の天才ってたくさんいるんだなあって思った、でも、自分はそれきりだった。なんだか、遠い人の話だと思ってしまったのだと思う。ハルの生き方には憧れるけれども、自分はそうは生きられないし、その隣にいることもできないなって。遠くの英雄を眺めている気分。
それを嫁が再発見して、ぐるぐる目になって、まあ、今、ちょっと大変なことになってる。あちこちで人に勧めまくってる。そこまでっていうのは自分には分からなくって、ただ、twitterとかでの感想を書いている人をみたり、進めている人を見たりすると、女の人がほとんどなので、多分、まあ、そういうことなのだろうと思う。
男の人から見ると、「自分とは違う主人公」の活躍の活躍の話としてみるのだけれども、女の人から見ると、「自分自身の話」「自分の友だちの話」として見えるのだろうと思う。それは、その文章での勘定や気持ちの動きの表現の巧みさや、この世界の中にあって、そして自分たちの世界にもある理不尽さへの共感であり、そこで発揮している自分たち自身の強さによるものだと思う。
人を磨り潰す世界があって、自分もみんなも、それに諾々とつぶされていくというのが、自分の持っている世界観なのだけれども、このハルみたいに、こっちの世界にも、それと力いっぱい戦ってる人はたくさんいるのかもしれない。


けっこう昔に自分はこの話を読んでいて、いつか嫁に面白いよと言って進めようと思ってずっとフォルダに入れておいた。これを嫁に見せたきっかけは中川イセ - Wikipediaの記事をどこかで読んで、ふと思い出したから。まさに女傑、という感じの人で、なんとなく通じるものがあった。強さと、強かさ。そういうもの。
異世界(広義の意味での)異世界に行っても、みんながみんな、ハルや千葉みたいにやっていけるわけじゃなくって、だいたいが、状況に流されて、むしろビスクさんや、女の人だったもう少しひどい感じで流されていく人の方が多いのだろうと思う。抑圧する側と、抑圧する側で抑圧される側と、抑圧される側と、抑圧される側で抑圧を内面化する人間と。どう考えても自分はそちら側で、むしろ、千葉よりもひどい人間になっていたのだろうなと思う。千葉は多分、だいぶましな部類になると思う。頭が悪いからっていうのもあるけれども。スモーブには慣れないかもしれないけれどもせめてチバになりたい。

異世界モノのパロディとしてのJKハル

ーとしての要素がとても強いですよね、実際の話。
異世界の野蛮な世界に飛ばされて、そこで成り上がる話、大体千葉みたいな人間がチート能力を手に入れて、キヨリみたいな人間と冒険する物語。それの“非コミュの人間が異世界に飛んでも結局非コミュだからこんなもんだよな…”みたいなリアリティがあって、イテテテテみたいな気持ちになった。そうだよね、あー、大体そうだよね。
たしか、自分が最初にJKハルを見つけたのは、「異世界転生もののテンプレで異世界に飛んだあとその世界で奴隷をやってる女の子を助けてその子がヒロインになる展開って多いよね」みたいな流れのツイッターまとめかなんあのところでこの小説を見つけたのがきっかけ、だったような気がする。(うろ覚え)
そのパロディ的な部分は、この物語へのとっつきやすさにもなっていて、ただ、その、“よくある異世界モノのテンプレ”を露悪的に批判するだけでなく、ちゃんと丁寧に補完している感じ。実際、そういう“異世界物のテンプレ”の物語でも、そういう部分をちゃんと(しかし年齢制限的に踏み込めずに)“あるもの”として描いている作品も多々ありますし。
あと、千葉から見たハルって、本当に「心の優しい黒ギャル」なのだなあっていうのと、実際にそうなんだなあ、って思う。ハルは、(まあハル自身のこともあるけれども)千葉のことを散々言っているけれども、一応人間として扱っていて(スモーブに関しても)というより、大体あらゆる相手に対して、ひどいことを言うけれどもそれはファックコミュケーションの内側なのだろうなと思う。好感度高い。その後の、犬のアレとかあるので、本当に、人間が人間をどう扱うか扱わないかということに対して、真摯に描いている作品だと思う。


この話は、多分、色々な見方をされる話だと思う。

話の要素の中に、売春婦、女性の権利だけではなくて、戦時の女性の扱いや、従軍慰安婦の問題も含まれている。
他にも女子のアクティブな性欲を、“美しくなく”“ネタでもなく”書いた作品というものを、あまり僕は見たことが無くて、そういう意味でも新しいという見方もできると思う。
臨死江古田ちゃんの中で、江古田ちゃんが働いているフィリピンパブで、お客さんとのリクリエーションの中で、“ブラー!”“ペッペ!”と声をかけて、“部活みたいでたのしい!”ってなるシーンがあるんだけれども、そんか感じで、美しいとか悲惨とか“異界”としての性風俗ではなく日常の中に組み込まれた性風俗の話のファンタジーものとしてみることも出来ると思う。いろいろな、多分、「新しい」って言われるだろう要素がたくさん入ってる。
踏み込むとどこまでも踏み込めると思う。でも、この物語の本質は多分そこではなく、“人が生きている物語”であるということだと思う。
それはこの物語に出て来る人間はみんな生きていて、それぞれの人生を、それぞれの人生として、生きて、生活して、死んでいく。さっき言ったテーマとかは見つけようと思えば他にもいくらでも見つけられるし、事実それはあるのだろうけれども、それよりも、そこに人間が生きていて、正しいことも間違っていることも全部ひっくるめて、抱え込んで生きたり死んだりしていて、そういう人間の物語自身がこのお話の真骨頂だ。
人が、このお話の中にテーマを見出すとすれば、それは自分自身の人生のテーマなのだと思う。
それに意味を見出してみようとすると、自分の生きている世界を眺めるみたいに、自分自身の鏡をそこに見てしまう。女の人の弱さだったり、強さだったり、男の人の抑圧だったり弱さだったり。生きて、考えて、失敗して、笑って、泣いて生きてる、生きてる人生の話は、合わせ鏡みたいに自分の人生を写し込む。


読んでみて

たのしいだけの話ではないし、ただ、読後感はとてもいい。作者の人のバランス感覚によるところも大きいだろうし、このお話のところの根っこのところある強い生命力があふれている。このお話は人間賛歌なのだと思う。人が生きていくこと、生きること、ただ生きるために生きることを讃えて応援するお話。


なので、一回読んでみてください。