orangestarの雑記

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映画「青鬼」を見た。聞いていたのよりも悪くなかったよ

映画青鬼を見た。amazonプライムにて。ちなみに原作は未プレイ。

ゲーム原作の映画化。
ゲームは、「青鬼という異形の化け物が徘徊する館に閉じ込められたに閉じ込められた人間が、館の謎を解きながら脱出を試みる」というもので、それを映画のシナリオに落とし込んだようなお話。

amzn.to

この映画のアマゾンレビューをみると、評価が「微妙」とか「最低」とか散々なんだけれども、自分がみたらそこまでひどく無かった。むしろ、しっかり作りこんでいるな、と感心しました。


僕はホラー映画とかパニック映画とか好きで、結構よく見るんですよ。ホラー映画、パニック映画の中にはもっともっとひどい映画がたくさんあるなかで、これはかなりしっかりと作られている方です。。モンスターがちゃんと動くし、CGが地面を歩いているし、編集もちゃんとしていて謎の間がないし、物語全体の謎解きも一応論理が通るように設定されている。


他のホラー映画の平均から比べたら、ちゃんとしてるし面白いし、一体何が不満なのかわからない。みんなクソみたいなホラー映画を見たことがないんだな?かわいそうに…。一週間後もう一度ここに来てください。本当の微妙映画をお見せしますよ、と俺の中の山岡が言っている。とりあえずオススメすると、ダメ映画界ではサメ映画にはずれなしなので、ひどい映画が見たかったら、何とかシャークって書いている映画を見るといいです。トルネードシャークはちゃんと見れる映画になっているので、初心者にもおすすめ。あと、オブザデッド系も、10本中9本は、アチャーな映画なので、おすすめ。初心者にもおすすめできるのはゾンビランドですね。ゾンビ映画の身内向けのダメなところが詰まっています。オススメ。ところで今ググったところ、シャークオブザデッドっていう映画ってまだないんですね。もうだれか作ってると思ったのに…。


話がそれましたけれども、この青鬼、とてもよくできています。あと、予算がない中でちゃんと映画にしよう、見れるものにしよう、という工夫があちこちに感じられる。画面の中で静と動をつけるための手持ちカメラでの移動など、(効果的かどうかは別として)ホラーで試される様々なカメラワークで画面が飽きないように作られていて、ホラー的な演出バリエーションの勉強になる。青鬼はかなりちゃんと作られているCGで、動くしちゃんと地面を歩く。先ほどの追いかけてくるカメラワークは、たぶん“青鬼が固定画面を動く”シーンを極力減らしたいけれども襲い来るシーンを書きたいということでの苦肉の策だと思う。CGが固定画面を動いていると手間がかかるけれども、画面自身が動いているとごまかしがきく部分が多いから。
そういう、「予算内で最高の映画」が作られてる。すごいうまいなあと思うし、ある程度ちゃんと怖いものに仕上がってると思う。「襲われて戻ったらばらばらになった死体がポンってどうなの」っていうレビューもあったけれども、これPC-12指定だから、そこらへんが限界なんだろうなあ…とも思うし。ぼんくら映画好きでない普通の映画ファンにそういう忖度を求めるのは無茶だと思うけれども。


あと、青鬼の初登場シーンがとてもよかった。


すでに何人かが死んでいて、でもなんで死んでいるのか分からない。別々の行動をしていてたら、突然、いたはずの部屋や場所で肉塊になってる。そういうのがあった後、暗闇の中で扉が開く。諸星大二郎の漫画に出てくるみたいな肉の塊の何かがノブをつかんで開いている。肉の塊の一部だけ見えて、カメラが素通りするので(本当にあった怖い話の“お分かりいただけただろうか”のような感じ)不安と不気味感だけが募る。あの一瞬がとてもよかった。


あと、青鬼が、死んじゃったこの声真似をするところとかですね。シナリオの展開の都合で最初から死んじゃってる人間だってことがわかってるんですけれども、そういう“怪物が声真似をして呼んでくる”っていうシチュエーションが好きです。知能があるけれども、知性がないという存在ってとても怖くないですか。


とにかく言われているほどひどいものではなかった。あのエンドには少し納得いかないというのもわかるけれども、たぶん全滅エンドにできない外部的な理由があったんだろう…アイドル映画だしな…。



同じように、「もともとのファンからは叩かれているけれども、映画としてはとても良い出来」という映画に、「リアル鬼ごっこ」があります。これも、原作をうまく改変して、平衡世界物としてうまく物語を作成していてとても面白いです。もし、ちょっとした人生の分岐点の選択肢を別で選んでいたらこうはならなかったのかもしれない、っていうやり直しとか、そういうSF的な物語になっていて、食卓SF好きとしては本当にうれしい。あと、シュールなジョークもよくて。作中で、異世界に飛ばされたときに「王様ってなんだよ?」とその世界の常識を知らない主人公に「王様って日本の王様だよ!」っていって遠くに見えるものすごい高いタワーを指さすシーンがシュールですごい好きですね。会話不可能性のジョーク。藤子F作品でよくあるやつです。そういうSF的ネタと状況説明をいっぺんにしてしまう。かなり脚本が練られている。とてもよいので一回見てみてください。


リアル鬼ごっこ

リアル鬼ごっこ




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