orangestarの雑記

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おしおという猫のこと

昨日(3/29)の夜、病院でできることはもうないということで、引き取ってきて、家で過ごすことにしました。


生き物のことだから、助かる可能性はゼロではないけれども、とても難しいということでした。


昨日の朝、病院へ朝一番にいきました。そこで、病気の説明を聞きました。病気の本当の原因が分かったということ。


あれから、ご飯を食べないので鼻から栄養剤を入れていたのですが、しばらくすると、鼻の穴から栄養剤が戻ってきてしまう。制吐剤も使っているのに、このようになるのはおかしいと先生は思い、エコーをとってみると、胃がパンパンになっていて、胃の出口のところから先に行っていない。出口のあたりに何かがあるのが移っている。ということ。


今の状況で、推測できるのは、胃の出口のところに腫瘍があるか、炎症があるか。他には、膵臓が腫れていて、それによって出口がふさがれているか。など。とりあえず、今の段階では、確定的なことが言えないので、今から午前中に検査をして、どうなっているのかを調べます。ということ。


本当は麻酔をして、CTを撮ったりして調べるのだけれども、今の容態だと、麻酔をしたら、身体が耐えられない(麻酔をしたまま目を覚まさない可能性がある)ということなので、CTは難しい。できる限りのことをして、調べる、ということでした。


そこで、もし、何かできる方法があるなら、その治療を始めます、ということでした。


そのあと、ケージの中のおしおを見に行くと、昨日よりも少し弱っているようで、ケージの奥のほうに、横になっていて、名前を呼んでも耳をピクリとも動かさない状態でした。おしおに、今のおしおの状態を説明して(おしおは言葉が通じる猫なので)今日、これから、検査をして、それで、ダメだったら、帰るよ、という話をしました。頑張ったね、偉かったね、おしおかわいいよ、というと、こちらにゆっくりと歩いてきて、身体を撫でさせてくれました。ケージの端に手をかけて、ケージからでて、帰ろうとしました。


午前中に検査をして、その結果を電話で伝えるので、午後、また来てください。と言われて、いったん帰りました。妻に電話をして、状態を伝え、もし、何とかする方法があって、それで何とかなる可能性が(それなりに)あるのなら、治療を続けるけれども、無理なら連れて帰ろう、ということを決めました。この時、話をしている最中に、自分の中に、ああ、もうダメなんだな、っていうのが、感情として降りてきて、おしおが病気になってから、初めて涙がでました。しばらく止まりませんでした。


それから、家に帰るバスの中では、今まで、のおしおとの生活を思い出していて、おしおという猫は、(たぶん、他の猫も同じなのですが)おしお以外には、おしおみたいなタイプの猫はいないのだな、と思っていました。おしおは、なんていうんだろう、たぶん昔は相当美人だったであろう場末のバーのママみたいな猫で、プライドが高くて、気に入らないことがあったりするとがあったりすると、ブニャ!ブニャニャニャニャ!と言いながら、まるでしゃべっているみたいな鳴き方で、こちらに話をしてくる猫でした。たぶん実際に、話しかけていたのだと思います。自分と妻が、話をしていると、そこに急に割り込んできて、ブニャニャニャニャ!と言ったり、他に、妻が、電話で、他の人と恋バナをしていると、そこに割り込んできて話をしたり(不思議なことに、というか、言葉が通じていると思われる理由として、恋バナ以外の時には、そのように割り込んでこないし、恋バナであったらほぼ確実に割り込んでくるんです)また、妻が、実家に行っている時に、電話をすると、その間に割り込んできて、また、文句をいったりするのでした。


こうして書くと、いつも怒っている猫のように聞こえますけれども、実際のところは、ほとんどゆったりと過ごしていて、というか、この家で自分が一番偉い女だ、と思っているので、機嫌よく、まったりと過ごしていました。子どもが生まれてからは、寝ているこどもの枕元にいて、枕になっていてくれたり(おかけでその間、子どもがよく寝てくれていた)子どもにむしられたりたたかれたりするのを“いいのよ”って感じの目で子どもを見ながら受け入れていたり。(そして、あまりにも酷いので子どもに怒って引き離すと“なんで怒るのよ!子どもはね!そういう生き物だから好きにさせてあげなさいよ!”っていうみたいに、ブニャブニャと言ってくる)、また、子どもが猫にちょっかいをかけて、“ちょっとこれは我慢できないわ”となって逃げてきた後、こちらに向かって(というか妻に向かって)“あなたの育て方がわるいのよ!”と言いたげにブニャブニャ長文ででいうような猫でした。ブニャブニャいうときに、こちらが反応しないでいると、“ちょっと!聞いてるの!”というように、続けて何度も言ってくる猫でした。


自分は、理性では(?)猫が人間の言葉を完全にわかることはない(単語レベルではわかるとは思っている)し、話が通じているように見えるのも、こちらの顔やしぐさにでる感情を見て、それに反応しているだけだと、思っている、いたのですが、おしおに関しては、本当に、言葉が通じていて、ただ、おしおは、猫なので、人間の言葉が離せないから、言葉が通じていない、んだろう、と、そのように思えたし、実際、おしおに対して、毎日、そんな風に接していました。


おしおは、うちの家での立場というと、飼い猫というよりも、姑、小姑でした。おんなとして一番えらいと思ってる。それは美人とかそういう女のレベルのことでなく、この家の女としてのえらさ。ただ、おしお自身美猫で、自分でも、自分が美しいと認識しているみたいだった。


おしおは、1歳まで別の家にいて、その家から聞いた話によると、とてもきれいな母猫との雑種で、小さい頃はその飼い主から、“ホワイトキャンディおしお”と言われていた。実際に美猫で顔だちの骨格も洋猫の血を引いているようではっきりとしていたし、毛並みは、長毛ではないけれどもふわふわで、とても良い毛皮みたいだった。目の周りだけ皮膚の色素が黒かったので、まるで、メバリを入れているみたいだった。(あの外国のファッションモデルがよくやるようなメイクを標準で実装)一応、毛の柄でいうと、白さびになるのだろうけれども、しっぽの部分と手先の部分だけほんの少し縞模様になっていて、それアクセントだった。小さい頃は体中真っ白だったけれども、年齢を重ねるごとに色が強くなってきた。手の肉球はピンク色と黒色がまだらになっていて、なんとなく高級感があった。


ただし、毛づくろいが下手で、(自分はうまいと思っている)ゴマの毛を逆さに毛づくろいして、気が付くとゴマの毛が逆立っていたり、身体から、湿気たよだれのにおいがした。(そしてそのときのゴマはいつも、なんとかしてくれよ)みたいな顔をしてた。あと、水飲むのも下手で、水飲みながら、舌先から水がはねて、あたり水滴だらけになっていたし、鼻の頭にも水飲んだ後はいつも水がついていた。


他にもいろんなことを思い出してた。


家に帰ったら、もう電話がかかってきていて、膵臓だったという、簡単な説明と、聞きに来てください、という連絡をもらっていた。自分たち家族4人と、おしおのお見舞いにきたいと言っていた、妻の友人と一緒に、病院へ向かう。


病院について、病状の説明をしてもらう。検査はCTで行った。本当は麻酔をして、造影剤も入れて撮影するけれども、弱って動かないので麻酔なしでもできるだろうということで、麻酔なしでCTをとった。造影剤はないので、血管の状態、そういうものはわからないけれども、膵臓の部分、普通は色の差が肝臓と出ない部分に色がついていて、たぶんそれが原因だろうと。肝臓は、映像から脂肪があることが確認されて、だから肝リピドーシスがおこっているのは、間違いないだろう、ということ。膵臓は腫れているけれども、それが、膵炎なのか膵臓癌なのかわからない。ただ、そこが腫れて炎症を起こしているので、それに伴って十二指腸が腫れて、そこから先に行かなくなっているらしい。


膵臓は、なかなか悪くなっても判断ができないし、悪くなっても気が付かない。定期的な検査でも検査できない。いつから悪くなったのかすらわからない、ということで、予防とか事前にわかるとかはできないものだった。わかった時には手遅れになっていることが多い。最初、糖尿病だと思って、糖尿病だったらよかったのに、と思って、肝リピドーシスだといわれて、これで決まりで別の病気でないことを祈っていて、でも最終的には膵臓の病気だった。


膵臓癌か、膵炎かわからない。でも、分かった結果、これ以上、治療としてできることはない、ということだった。内科的には、今までの、点滴で栄養分と肝臓の薬を投入するだけ。膵臓に対する薬も存在するけれども、それは肝臓に負担がかかり、今の状態では使うことはできない。外科的な処置、お腹を開けて幹部をみて何かできるか様子をみる、ということもあるけれども、膵臓は場所が難しいところにあるということや、原因もまだわからないので、お腹を開けてみても、何もできずに閉じることになることにもなるかもしれない、ということだった。なにより、今の体力では、全身麻酔をしたら、そのまま目を覚まさないだろう、ということ。あとは本人の自己治癒力に期待するしかないということだった。(ただ、ここ何日の絶食状態で体力が落ちているので、難しいだろう、ということ)


なので、病院でできることはないし、今してる治療も、通院でできるので、できれば、家でいてあげてほしい。本人のストレスの問題もあるし、自宅だと安心する。なので、自宅で過ごさせてあげるのもいいかもしれません、と自宅での療養を提案された。そして、自宅へ連れ帰ることにした。


そのあと、おしおと面会。元気はなかったけれども、友人が、婚活に失敗した話をしたら、その時だけ反応したのがおしおらしいと思った。今日、これから、帰るという話をした。


今、病院でできる治療を全部して、家で何もしないでいいように、今日の夕方の治療まで終わらせてからお渡しするのがいいでしょう、ということで、今度は7時くらいに来ることに。一回駅前までいって、買い物をした。いつもの家で使う食材と、おしおの好きなもの。いつもは体に悪いからと言って食べさせないもの。缶詰とか、生クリームとか。長男と一緒にスーパーを回って、いい猫餌をさがす、ちゃうちゅーるを買うと、長男が「きっとおしおよろこぶねえ」と明るい声でいった。缶詰を選んでいるとき、猫の年齢別になっていて、10歳から、15歳から、17歳から、とシニア用の缶詰が並んでいて、10歳からの缶詰をとった。この先の缶詰はもうないんだな、この先の缶詰を食べる、別の猫はいるんだな、と思った。あと、薔薇の花が好きで、お祝いにもらった薔薇の花を以前むしゃむしゃ食べていたので、花屋で一番香りの強いバラをください、と言った。


、妻と子どもは先に家に帰って、自分が引き取りに行く。猫の移動バックがなくても、もうそんなに動けないので、エコバックみたいな鞄にバスタオルを入れたもので引き取りに行った。家に帰れるとわかったおしおは少し嬉しそうだった。帰りの中のタクシーでバックの中から顔を出して、外を見たがった。おしおは、いつも窓のそばから外を見ている猫だったな、と思った。少しノーンというような声で鳴いて、いつもだったら絶対に出さないような弱い声だったけれども、病院では鳴こうとしても、ものすごい小さい声で息が漏れるような声だったので、少し安心した。


家に帰って、はしゃぐ子どもをみて、おしおは少し嬉しそうだった。


トイレに行こうとして、トイレの段差を超えられなくて粗相をしてしまった。


恥ずかしいのか、そのまま、お風呂場へいってしまった。


居間に連れてくる。撫でられていると少し嬉しそうだった。


長男が、「おしお、おかえり」といった。


買ってきたご飯は食べなかった。胃の中がパンパンになっているから辛いのかもしれない。


だた、チャウチュールという名前を長男が行ったとき反応した。普段CMをしているのを聞いて、覚えていたのかもしれない。おしおっぽい。


他の猫は、病院の匂いがするのか、警戒してこなかった。


そのあと、また、お風呂場へ行こうとする。たぶん、体が悪いから涼しい場所を探しているのだと思う。ただ、お風呂場はあまりにも寒いので、あとで、今に連れてこようと思う。


子どもたちがお風呂に入る。そういえば、子どもたちがお風呂に入っているとき、いつもお風呂場の外で様子をうかがっていて(お風呂で子どもがひどい目に合ってるとおもっている)いつもお風呂から上げるとニャゴニャゴいっていたので、お風呂の前で、そのまま待たせたまま子どもたちをお風呂に入れる。少し嬉しそうだった。


おしおの鼻の穴からは鼻水のようなものが出ている。逆流した栄養剤のようで、やっぱり、胃の下から先に行ってないみたいだ。



お風呂に行こうとして、歩くのもしんどい体でベビーゲートを飛び越えようとして途中でベビーゲートにぶち当たっていた。驚いて、扉を開けてあげた。騒がしいのがちょっと辛いのかもしれないので、みんなが寝たら居間に連れてこようと思った。


部屋の中、窓のそばやソファの下や、あちこち歩いた後にベビーベットのしたに落ち着いた。


近くに布団を敷いて、今日はそこで寝ることにした。


おしおはこっちを見る姿勢で、猫座りをしていた。


撫でたりしながら、いつの間にか自分も寝ていた。


翌朝、いっちゃん(イリタ、猫)不安そうな鳴き声でずっと鳴いているので目が覚める。自分が病気の時とかに出す声で。


いっちゃん以外の他の猫(ゴマ、マメ)も不安とストレスで不安定になっていて、おしおのすぐそばには近づかないけれども、みんな、部屋の中にいて、じっとおしおを見ていた。


おしおはやっぱり昨日よりも具合が悪くなっていて、鼻から、栄養剤が結構戻っていた。やっぱり胃から先に行ってない。


鼻の下の汚れを拭いてやる。ほらきれいになったねー、いつも通りかわいいよーと声をかける。


嫁が起きてきて、口の中が乾いてしんどそうだから、といってスポイトと水で口を湿らせる。少し口が開くようになったみたい。


缶詰を開ける。小さいころ、缶詰をよく食べていたので、その音がすると未だに反応していたから。人間の食べるツナ缶が開く音がすると近くに寄ってきて、気が狂わんばかりの声で鳴いていた。缶詰を開けたんだけれども、あのプシュ!という音のしない缶詰だったみたいで、音がしないので、こっちを見なかった。ただ、缶詰の中身のにおいをかがせたら少し反応した。結局食べなかったけれど。


長男が起きてきて、おしおをなでる。「おしおおはよー。おしおかわいいねえ」と言って頭を撫でる。おしおも少し嬉しそうだった。おしおは子どもを孫みたいに可愛がっていたので。


妻とおしおについて話してると、おそらく、本人のブニャブニャ!と同じようなしゃべり方で(ほとんど声は出ていなかったけれども。ナア、ナア、という感じ)声をかけてきた。


自分は、おしおが何か言い残したいのかも、といって、妻はそこまで殊勝な猫ではないので、きっと、「このしんどいのをどうにかしなさいよ!」って怒ってると言っていたのだけれども、あとで考えると、「ちょっと!勝手に私を死んだことにしてるんじゃないわよ!」って言ってたんじゃないかな?って思う。


朝、病院が開く時間になって病院に連れていく。


病院に行くよ、っていうと、病院へ連れていく鞄のバスタオルに寄ってきて、わかってるんだな、と思った。


行く途中、少しだけ外を見た。ちょっとだけ、町の感じが、昔、おしおが家出した場所に似てたし、昔住んでいた場所に似てるのかもしれないと思った。


病院では、もうできることはないので、ということで皮下点滴で水分と、ちょっとの栄養だけ。注射で3回背中に入れて、ほんの5分で終わった。家で過ごさせてあげてください、と言われた。だいぶ意識が朦朧としているみたいだった。


家に帰ると、妻が泣いていて、おしおがいないと、これから子育てをしていく自信がないって言っていた。子どもを叱りすぎたときとか、いつもおしおが叱られた子供のフォローしていたし、妻をブニャニャニャ!と“子どものしたことにそんなに怒らない!”って怒ったりしていた。他にも、たくさん。おしおは子どもの世話をしていたので。


家に帰ると、おしおはやっぱり、もっと動けなくなっていて、自力で鞄から出れないくらいになってた。もしかしたら昔の夢を見てるのかもしれないと思った。


長男が、おしお、って言いながら撫でる。死という概念がないのかもしれないけれども、でも、そんな風にいつも通りおしおに接していてくれるのは救いだと思った。


この病気は、ただただしんどいだけで、苦しいとか痛いとかないのがよかった。いつ最期になるかわからないけれども、それまで、一緒にいれるといいと思った。


10年家で暮らしていて、今日までで、苦しいのが、全部合わせても、10日くらいしかないのが、良かったと思った。