orangestarの雑記

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なぜなろう小説に異世界ファンタジーが多いのか

書き手側の事情についての話(推測

異世界転生系コンテンツと21世紀の「浄土信仰」 - シロクマの屑籠

に対する返信のようなもの。
読み手側の事情のみから書かれているけれども、書き手側の事情も(というよりなろう小説の中の作品数の種類、数、比率は読み手側の需要よりも供給側の事情で変わるので書き手側に拠るところが大きいと思う)。


一言インターネットの発達に伴う●●警察の台頭でにわか知識の現実世界を舞台およびSFにした物語が書きにくくなったのと、書くなら設定調べなどが必要でそこん所で異世界ファンタジーになる部分は大きい。

“物語”の構造について

基本的な物語の構造は、異世界ファンタジーにしてもリアルを舞台にした物語でも変わらない。

弱虫ペダルでもブリーチでもはじめの一歩でも桃太郎でもハリーポッターでも。

ある日突然“異能”あるいは、“自分に秘められた特殊な才能”に目覚めた、および気付いた主人公が、その能力を使って、いろいろとうまくやるけれども、その才能だけではどうにもならない壁にぶつかって、友人の力や協力者の助力を得て、問題を解決する。

という物語の構造になっている。

異世界転生の物語構造も変わらない

異世界転生もやはり、最初転生に置いてスキル、または前世の知識という“異能”を持っていて、それで最初はうまくいくけれども、それではどうにもならなくなって、それまでに仲間になった友人や彼女、または知識を使ってどうにかする、という物語が展開される。その後は、友情と努力と勝利の英雄譚である。


英雄譚を含むビルディングスロマンは大体こういう構造になっていて、島耕作でも大枠ではこの構造の中に含まれる。この構造は古今東西、常に好まれて人気になる物語体系で、それが人気で主力の物語である。なので、この物語の構造から、時代を語ることはたぶん出来ないと思う。だからこの物語類型の話はとりあえず議論から置いておく。

ではなぜ舞台として異世界が選択されるか

なろう小説は『需要』よりも先に『供給』がなされるプラットホームである。
書き手側の事情で、異世界ファンタジーが選択され、模倣者もでるのでさらにそれが増える、という状態なのだと思う。では書き手の事情とは何か。ひとまず、自分が書き手になったらという過程で考えてみてください。ためしに、


ある日突然“異能”あるいは、“自分に秘められた特殊な才能”に目覚めた、および気付いた主人公が、その能力を使って、いろいろとうまくやるけれども、その才能だけではどうにもならない壁にぶつかって、友人の力や協力者の助力を得て、問題を解決する。

例えば簡単に思いつくのは
という構造の物語を、何か考えてみてください。

  • パンを焼く才能がある人間が、日本一のパン屋を目指す話
  • ワインの味が分かる才能の人間が、ワインで身をたてる話
  • 人心掌握能力のある人間が、政治家を目指す話
  • サイコメトリー能力のある人間が警察と事件を解決する話
  • 動物と話が出来る人間が獣医を目指す話
  • 人の心を覗ける人間が精神科医を目指す話
  • 水の中でいい視力を持ってる人間が海猿を目指す話
  • 炎を恐れない人間が消防士となってレスキューを目指す話

などなど。そして次に、
その物語を“作品”というレベルにするにはどういう下調べと調査をしないといけないかを考えてみてください。ものすごい量の調査と、下調べがいります。


スポーツ物は比較的調べやすいですが、職業ものになると難易度はさらに上がるし、しかもやっかいなことにインターネット時代は●●警察がたくさんいます。生半可な知識や調査ではそれでふるぼっこになる可能性がある。功夫を積んだレベルのそれなりに高い軍オタが書いた戦記モノでも、フルぼっこされる時代ですよ。


さらに、ある程度、職業や軍や仕事や乗り物、科学、そういうのに詳しくて現実世界でそれについての話を描く能力があっても、そういう警察のガサいれがめんどくさかったり知ってるけど曖昧な知識をもう一度確認する作業が大変だったりして、“現実世界にある程度似ていて、同じような条件を持っている異世界ファンタジー”を選ぶことも、おそらく結構多いと思う。


職業でやっているのならともかく、なろう作家は本当に趣味で書いている人たちなので、物語を作り上げるまでに出来る調査が限られているというのが、異世界ファンタジーが増える理由だと思う。


ところで、幻想再帰のアリュージョニストという小説は、異世界転生ファンタジーですが、膨大な資料と知識によって作られていてすごいので是非一読お願いします。


自分は、時代を反映、浄土信仰というよりも、そのような理由で異世界ファンタジーが書かれているのと思います。




あと、それとは別に。


ある日突然“異能”あるいは、“自分に秘められた特殊な才能”に目覚めた、および気付いた主人公が、その能力を使って、いろいろとうまくやるけれども、その才能だけではどうにもならない壁にぶつかって、友人の力や協力者の助力を得て、問題を解決する。

という物語類型自体が、「現実逃避のコンテンツ」という論なら間違っていないと思う。現実逃避は今に始まったわけではなく、英雄譚やその他の類する物語、宮廷物語などは、現実に疲れた人を慰め、明日の現実を生きるための糧となってきたんだと思う。





だから物語はすばらしい。

追記:最近のおすすめなろう小説

上記で書いた、異世界転生とかビルディングスロマンとは関係ないですが最近のおすすめは
ncode.syosetu.com
28歳の女将軍副官(筋肉ゴリラ)が、なぜか後宮に入ることになり、腕力と戦場の論理で、後宮という女の戦場を戦いぬく話だよ!超面白い!新しい王さまが18歳なので、後宮の女の子はみんな16~18歳だし、一番上でも21歳!後宮は欲望と権謀術数が蠢く毒蛇の巣だぞ!戦え!ガングレイヴ帝国八大将軍『赤虎将』副官!ヘレナ・レイルノート!!28歳処女!